日産自動車は6月、小型スポーツ用多目的車(SUV)「キックス」を6年ぶりに全面改良した。いずれのグレードもハイブリッド車(HV)で、燃費の良さや電気自動車(EV)並みの静粛性が強みだ。販売不振だった前モデルからの巻き返しを図る一台となっている。
第3世代「eパワー」を国内投入車で初搭載
最大の特徴は、日産独自のHVシステム「eパワー」の最新版にあたる第3世代「eパワー」を国内投入車で初めて搭載したことだ。廃熱回収技術の改善などで燃費を約1割向上させ、航続距離は1リットルあたり25.7キロ・メートルと競合車と互角の水準まで高めた。
四輪駆動モデルには、四つの車輪を個別に制御する技術「eフォース」も搭載し、コーナーでの安定した走りと快適な乗り心地を実現。強みとしていた静粛性も大きく向上した。
デザインと実用性
「ゼロから考え直した」というデザインは、アメリカンフットボールのヘルメットから着想を得た。前方のフロントグリルが水平基調に幅広く伸び、力強さや軽快さを表現している。5人乗りで税込み約299万円からと価格面でも競合車とほぼ同水準だ。
全長は前モデルより約7センチ長く、荷室は開口幅を約14センチ広げて容量は50リットル以上増えた。身長約170センチの記者が後部座席に座ると、頭上も膝周りもゆとりがあった。
試乗インプレッション
7月に都内の市街地で試乗し、9月には神奈川県横須賀市のテストコースでハンドルを握った。フロントグリルの横には3本のライトが並び、ヘルメット前面のフェースマスクにある格子状のバーをイメージさせる。先進的で強く引きつけられた。
「eパワー」のエンジンは発電専用で、走りは大出力モーターが担う。市街地ではほとんどエンジンがかからないため、車内はEV並みに静かで、後部座席との会話もしやすかった。ハンドルの反応も繊細で、きびきびと思い通りに動く感触だ。四輪駆動タイプにはeフォースが搭載されており、テストコースで少し速いスピードでコーナーに入ってもスムーズに曲がれた。
販売状況と今後の展望
日産によると、前モデルの2025年の販売台数は前年比約3割減の9595台で、ホンダのヴェゼルに7倍の差をつけられ、トヨタ自動車のカローラクロスにも大差をつけられた。ただ、新型キックスは9月末時点で約1万7000台の受注が入り、幸先良いスタートを切った。
生産拠点も国内に移し、当初は追浜工場(神奈川県)で生産し、その後は福岡県の工場で生産する計画だ。27年度末に生産を終える追浜工場最後の新型車が日産の存在感をどこまで取り戻すか注目される。