電気自動車(EV)への移行が加速する中、自動車産業のサプライチェーンはかつてない変革を迫られている。従来の内燃機関車と比較して、EVの部品点数は約3分の1に減少するとされ、これにより部品サプライヤーのビジネスモデルは根本から見直しを余儀なくされている。
部品点数の減少とサプライチェーンの再編
EVの駆動系は、エンジン、トランスミッション、排気系など数百もの部品から構成されていた内燃機関車とは異なり、モーター、インバーター、バッテリーといった主要コンポーネントで構成される。このため、部品点数は大幅に減少し、従来の部品サプライヤーの中には事業縮小や撤退を余儀なくされるケースも出てきている。
一方で、EVに不可欠なバッテリーや半導体、軽量化素材など、新たな領域での需要が急増している。特にバッテリーはEVの価格の約3割を占めるとされ、その調達競争は激化している。
新たな素材と技術の需要
EVの航続距離を延ばすためには軽量化が不可欠であり、アルミニウムや炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などの軽量素材の採用が進んでいる。また、モーターの効率を高めるための希土類磁石や、パワー半導体として注目されるSiC(炭化ケイ素)など、先端材料の需要も高まっている。
これらの新素材は従来のサプライチェーンにはないものであり、自動車メーカーは素材メーカーとの直接的な連携を強化している。例えば、トヨタ自動車はパナソニックと合弁会社を設立し、車載用角形リチウムイオン電池の生産を強化している。
サプライヤーへの影響と対応
部品点数の減少は、特にエンジンやトランスミッション関連の部品サプライヤーに大きな打撃を与えている。これらの企業は、新たな事業領域への転換を迫られている。例えば、デンソーはEV向けの熱マネジメントシステムや電子部品に注力し、アイシン精機は電動化ユニットの開発を進めている。
また、部品サプライヤーの中には、M&Aを通じて事業ポートフォリオを変革する動きも見られる。住友電気工業は、EV用ワイヤーハーネスの生産拡大に加え、パワー半導体事業への投資を強化している。
地域別の動向
EVシフトの影響は地域によっても異なる。日本の自動車産業は、ハイブリッド車(HV)で強みを持つが、EVへの本格的なシフトは遅れているとされる。一方、中国や欧州ではEVの普及が急速に進んでおり、現地のサプライチェーンが構築されつつある。
特に中国は、バッテリー生産で世界をリードしており、CATLやBYDなどの企業が大きなシェアを占めている。日本メーカーは、こうした競争の中でいかに差別化を図るかが課題となっている。
今後の展望
EVシフトは、自動車産業のサプライチェーンを根本から変える可能性を秘めている。部品点数の減少は、サプライヤーの淘汰を促す一方で、新たなビジネスチャンスも生み出している。自動車メーカーとサプライヤーは、従来の枠組みにとらわれない柔軟な連携が求められる。
業界関係者は「EVシフトは単なるパワートレインの変更ではなく、産業構造そのものの変革だ」と指摘する。今後の動向が注目される。



