EVシフトがもたらす部品産業への影響
電気自動車(EV)への移行が加速する中、日本の自動車部品産業はかつてない構造転換を迫られている。従来のガソリン車に不可欠だったエンジンやトランスミッション、排気系部品などの需要が急減し、部品メーカーは生き残りをかけた戦略転換を余儀なくされている。
日本自動車部品工業会の調査によれば、2030年までに国内のEV販売比率が30%を超えると予想されており、これに伴いエンジン関連部品の市場は2020年比で約40%縮小する見通しだ。一方で、バッテリーやモーター、インバーターなど電動化に必要な部品の市場は同期間に3倍以上に拡大するとされている。
主要部品メーカーの対応策
こうした状況下で、大手部品メーカーは積極的な事業構造の転換を進めている。デンソーは2025年までにエンジン関連部品の生産を段階的に縮小し、代わりにEV向けの熱管理システムやセンサー類の開発に注力する方針を打ち出した。同社の林宏之社長は「エンジン部品で培った技術を電動化に活かす」と述べ、既存技術の転用によるコスト競争力の維持を強調している。
また、アイシンはトランスミッション事業の縮小を進める一方で、eアクスル(電動駆動モジュール)の生産能力を2025年までに現在の3倍に引き上げる計画を発表した。同社は「電動化対応部品の売上高比率を2030年までに50%以上にする」という目標を掲げている。
中小部品メーカーの苦境
しかし、大手と比べて中小部品メーカーの対応は遅れている。東京商工リサーチのデータによると、2023年度に自動車部品関連で倒産した企業は前年比15%増の120件に上り、その多くがエンジン部品や排気系部品を主力とする中小企業だった。ある経営コンサルタントは「EVシフトへの対応が遅れた企業は、取引先からの受注減少に直面し、資金繰りに窮している」と指摘する。
政府も対策に乗り出しており、経済産業省は中小部品メーカーの電動化転換を支援するための補助金制度を2024年度から拡充する方針だ。具体的には、EV向け部品の試作開発や設備投資に対して最大で半額を補助するという。
電動化に伴う新たなビジネスチャンス
一方で、電動化は新たなビジネスチャンスも生み出している。例えば、バッテリーリサイクルや充電インフラ関連の部品需要が急増しており、これまで自動車部品とは無縁だった化学メーカーや電子部品メーカーの参入が相次いでいる。また、EVの軽量化に貢献する炭素繊維複合材料やアルミニウム部品の需要も拡大している。
日本政策投資銀行の試算では、2030年のEV関連部品市場は2020年比で約5倍の15兆円規模に成長する見込みだ。この市場を巡り、国内外の企業間で競争が激化している。特に中国や韓国のバッテリーメーカーが日本市場への攻勢を強めており、日本の部品メーカーは技術力と品質で差別化を図る必要がある。
今後の展望と課題
日本の自動車部品産業が生き残るためには、電動化への迅速な対応とともに、水素エンジンや次世代電池など次なる技術革新にも目を向ける必要がある。トヨタ自動車が開発を進める水素エンジンは、既存のエンジン部品メーカーにとって新たな活路となる可能性がある。また、全固体電池の実用化が進めば、バッテリー部品の構造も大きく変わるだろう。
業界関係者の間では「2025年から2030年が生き残りをかけた正念場」との認識が広がっている。迅速な事業構造の転換と新技術への投資が、日本の自動車部品産業の未来を左右することになる。



