日本の自動車産業が岐路に立たされている。トヨタ自動車が推進する水素エンジン戦略に暗雲が垂れ込め、日産自動車と本田技研工業の連合が電気自動車(EV)シフトを加速させる中、中国勢の猛追も激しさを増している。
トヨタの水素エンジン、量産化の壁
トヨタは水素エンジン車の開発に注力してきたが、量産化には大きな壁が立ちはだかる。水素の製造コストやインフラ整備の遅れが課題だ。トヨタの関係者は「水素エンジンはCO2排出量を実質ゼロにできるが、普及には時間がかかる」と認める。一方、欧州や中国ではEV一辺倒の政策が進み、水素エンジンの存在感は薄れつつある。
日産・ホンダ連合、EVで攻勢
日産とホンダは2024年3月、EV分野での包括的提携を発表。両社はバッテリーや駆動ユニットの共通化を進め、開発コストを30%削減する計画だ。日産の内田誠社長は「協業により、EVの競争力を飛躍的に高める」とコメント。ホンダの三部敏宏社長も「市場の変化に迅速に対応する」と意気込む。この連合は、テスラや中国のBYDに対抗する切り札と見られる。
中国勢の猛追、日本勢のシェア低下
中国市場では、BYDや蔚来汽車(NIO)などの現地メーカーがEV販売を急拡大。2023年の中国新車販売に占めるEVの割合は約25%に達し、日本勢のシェアは低下の一途をたどる。日本自動車工業会のデータによると、2023年の中国市場における日本車のシェアは約15%と、5年前の20%から減少した。特にEV分野での遅れが響いている。
水素エンジン vs EV、技術の分岐点
トヨタの豊田章男会長は「EVだけでなく、水素エンジンやハイブリッドも含めたマルチパスウェイ戦略が重要」と主張する。しかし、市場はEVへの傾斜を強めており、水素エンジンの実用化が遅れれば、トヨタの戦略は後手に回る可能性がある。大手証券のアナリストは「トヨタの水素エンジンは長期的な選択肢だが、短期的な収益にはつながらない」と指摘する。
政府の政策、EV普及への後押し
日本政府は2035年までに新車販売の100%を電動車(EV、プラグインハイブリッド、燃料電池車など)にする目標を掲げる。2024年度の補正予算では、EV充電インフラ整備に1000億円を計上。経済産業省の担当者は「充電環境の整備を加速し、EV普及を後押しする」と説明する。ただ、水素ステーションの整備は遅れており、2023年末時点で全国に約170カ所にとどまる。
自動車産業の未来、生き残りをかけた戦い
日本の自動車産業は、EVシフトと水素エンジンの両立という難しいかじ取りを迫られている。トヨタ、日産、ホンダの3社はそれぞれ異なる戦略を打ち出すが、グローバル競争の中で生き残るためには、選択と集中が不可欠だ。業界関係者は「日本の自動車メーカーは、技術力で差別化を図ると同時に、コスト競争力も強化しなければならない」と語る。



