中国が、電気自動車(EV)のモーターや風力発電機などに使用されるレアアース(希土類)の輸出規制を強化する方針であることが、複数の関係者の話で明らかになった。これは、米欧との先端技術を巡る覇権争いが激化する中、中国が重要鉱物の供給網を支配下に置く戦略の一環とみられる。
規制強化の背景と内容
中国商務省は先月、レアアースを含む特定の重要鉱物の輸出許可制度を厳格化する新たな規則案を公表した。この規則案では、輸出業者に対して鉱物の最終用途や最終需要家に関する詳細な情報の提出を義務付けており、許可を得るためのハードルが大幅に引き上げられる。関係者によれば、この規制強化は、中国が世界のレアアース生産の約60%、精製においては約90%を占める支配的な地位を背景に、自国の技術的優位性を守り、半導体やEVなどの戦略産業における競争力を維持する狙いがある。
世界市場への影響
レアアースは、ネオジムやジスプロシウムなど17の元素から成り、EVのモーターに使われる強力な磁石や、軍事用レーザー、医療機器など幅広いハイテク製品に不可欠だ。中国の規制強化は、世界のサプライチェーンに大きな混乱をもたらす可能性がある。米国や欧州連合(EU)は、中国への依存度を低減するため、自国内でのレアアース採掘やリサイクル技術の開発を加速させているが、短期的な代替は困難とみられる。業界アナリストは「中国の新たな規制により、レアアース価格が高騰し、EVの生産コストが上昇する恐れがある」と指摘する。
米中の対立と安全保障の観点
この動きは、米中対立の先端技術分野への波及を示すものだ。米国は半導体やAI分野での中国への輸出規制を強化しており、中国はレアアースを「対抗手段」として活用している。ワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)の専門家は「中国はレアアースの供給を切り札として、米国の技術封じ込めに対抗しようとしている」と分析する。また、日本や欧州の自動車メーカーも、調達先の多様化を迫られる可能性が高い。
今後の展望
中国商務省は、規則案に対するパブリックコメントを募集しており、年内にも正式に施行される見通しだ。中国政府は「国家安全保障と環境保護のため」と説明しているが、実際には自国の産業保護と地政学的な影響力の強化が目的との見方が強い。世界のEV市場の成長が加速する中、レアアースを巡る国際的な駆け引きは、今後さらに激しくなると予想される。



