ハーバード大ドワーク教授、AIが差別助長する恐れと指摘…日本国際賞受賞者が読売新聞のインタビューで警鐘
AIが差別助長の恐れ、ドワーク教授が警鐘…日本国際賞受賞者インタビュー

人工知能(AI)の公平性や個人情報保護の研究を切り開き、2026年の日本国際賞を受賞した米ハーバード大のシンシア・ドワーク教授(68)が、読売新聞のインタビューに応じた。AIが社会の差別を助長する恐れがあると指摘し、軍事利用では最終的な責任を人間が負う必要性を強調した。

差別を助長する恐れ

ドワーク教授は、日本国際賞の受賞について「大変光栄です。権威ある日本国際賞を受賞するとは想像しておらず、実にうれしかった」と語った。

AIによる差別防止の重要性について、教授は「人間から差別そのものを完全になくすことはできない。良くなってほしいが、現実に差別はある。AIについての懸念の一つは、差別を助長する恐れがあることだ」と述べた。

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米国では政府もAIを利用しており、行政サービスや給付の提供に使われる。そこに差別があってはならないとし、企業の広告についても「企業自身に差別する意図がなくても、広告を誰に届けるかを決める技術が偏ったデータで訓練されていれば、特定の層に広告が届かないことがある」と指摘した。

「人間が責任を」

AIを科学研究に使う動きについては、「AIを適切に使えば、科学を支援する大きな力になるだろう。ただ、AIが科学を主導するわけではない。AIが『どの問いが重要か』を学べるのかは未知数だ。現時点で考えられるのは、人間が主導し、AIが強力に補助するということだ」と述べた。

AIがソフトウェアの弱点を発見できる一方、サイバー攻撃に悪用される恐れについては「答えが簡単に出ない問題だ。非常に強力なAIを広く公開する前に、重要な基幹システムにある欠陥を探し、修正するために使うという考え方は理にかなっている。いずれ、この技術は広まるだろう。サイバー攻撃の防御にも、ソフトウェアの脆弱性の発見にも使われるだろう」と語った。

米国や中国などが進めるAIの軍事利用について、教授は「AIを構築している人々は、まだ軍事利用には適さないと言っている。彼らはAIにどのような危険があるのかをよく理解しているため、私は彼らの言葉を重く受け止めている」と述べた。

さらに「人間がAIによる判断について責任を負わない状態になることに、強い違和感を覚える。仮にAIを軍事利用するにしても、誰かがその判断に責任を持たなければならない。AIを使うと決定したことにも、使用した結果にも、人間が責任を負う必要がある」と強調した。

日本の暗号研究に優位

日本の情報科学研究については、「日本の研究者は情報科学分野で活発に研究に取り組んでいて、誇るべき成果が数多くある。特に、日本の暗号研究が非常に優れている。4月に訪日した際、アルゴリズムの公平性に関する興味深い研究や、プライバシーに関する先端的な研究を知った。日本の研究者との交流や共同研究が今後、増えるとうれしい」と述べた。

4月の授賞式で天皇陛下と話したことについては「親切で気取らない方だった。陛下は音楽や武道、水上交通や水路の重要性についてお話しされた。陛下から『どのような音楽が好きですか』と聞かれ、私はバッハ、ベートーベン、ショパンのクラシックを挙げた」と語った。

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ドワーク教授は、個人名や行動履歴などのビッグデータに統計的な「ゆらぎ」を意図的に加えることで個人情報の漏えいを防ぐ「差分プライバシー」という方法を開発した専門家。世界の主要IT企業のサービスや米国の国勢調査で活用されており、デジタル社会で安全性を守る技術基盤を構築した。公益財団法人・国際科学技術財団が、独創的な研究成果で社会の発展に貢献した国内外の科学者らに授与する2026年の日本国際賞の受賞者に、「エレクトロニクス・情報・通信分野」で選ばれた。