次世代通信規格「5G」の基地局整備が都市部に偏り、地方でのサービス格差が拡大している。総務省の調査によると、2023年末時点の全国の5G基地局数は約10万局に達したが、その約7割が東京、大阪、名古屋の三大都市圏に集中。地方部では人口カバー率が50%を下回る地域もあり、デジタルデバイドの深刻化が懸念されている。
総務省が目標設定、補助金拡充へ
総務省は2025年度までに全国の人口カバー率を95%に引き上げる目標を掲げ、2024年度補正予算で基地局整備向けの補助金を前年度比1.5倍の約800億円に拡充する方針だ。また、地方自治体が主導する基地局設置プロジェクトへの支援も強化し、規制緩和による手続き簡素化も進める。
「5Gは地域経済の活性化や医療・教育分野の革新に不可欠。地方での整備遅れは、新たな格差を生むリスクがある」と総務省の担当者は指摘する。同省は2024年夏までに具体的な推進計画を策定し、携帯キャリア各社との連携を強化する。
キャリア各社の戦略と課題
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3社は、都市部での需要に応えるため基地局投資を優先。地方では人口密度が低く、投資回収が見込みにくいことが課題だ。KDDIの広報担当者は「自治体との協業やシェアリングモデルの活用でコスト削減を図りつつ、エリア拡大を進める」と説明する。
一方、楽天モバイルは自社回線の整備に加え、他社とのローミング契約で地方カバレッジを補完する戦略を取る。しかし、全体的な整備ペースは鈍く、2024年度の地方5G人口カバー率は65%程度にとどまる見通しだ。
地方自治体の取り組みと期待
地方自治体も独自の取り組みを加速。例えば、鳥取県は県内の全自治体と連携し、2025年度までに県内全ての市町村で5Gを利用可能にする計画を発表。補助金を活用し、公共施設や観光地への基地局設置を進める。
「5Gは遠隔医療やスマート農業の基盤。整備が遅れれば地域の競争力低下につながる」と鳥取県の情報政策課長は強調する。他の県でも同様の動きが広がり、総務省は成功事例を全国に横展開する方針だ。
専門家の見解と今後の展望
情報通信総合研究所の主任研究員は「5Gの地方格差は、単なる通信速度の問題ではなく、地域のデジタル化全体の遅れに直結する。国と自治体、キャリアの三位一体の取り組みが不可欠」と指摘。特に、2024年以降に本格化する「ポスト5G」や6Gに向けた研究開発でも、地方のインフラ整備が鍵を握るとする。
総務省は2024年度中に、5G基地局整備の進捗状況を可視化するダッシュボードを公開し、透明性を高める計画。また、2025年度の目標達成に向け、さらなる補助金拡充や税制優遇措置も検討している。
5Gの普及は、自動運転や遠隔手術、高精細映像配信など新たなサービスの基盤となる。地方での整備遅れが解消されなければ、都市と地方の情報格差は一段と拡大し、地域経済の衰退を招く恐れがある。総務省の対策が実効性を持つかどうか、今後の動向が注目される。



