生涯スポーツの国際大会「ワールドマスターズゲームズ」(WMG)が来年、関西で開催される。日本開催は初めて。バスケットボールと陸上競技で出場予定の70代の男性2人は「年齢はできない理由にならない」と腕を磨く。練習に同行し、その意欲の源泉を探った。
バスケ75歳、動きは「いい意味で目立たない」
8月上旬の日曜日。横浜市保土ケ谷区の小学校体育館で、男性約15人がバスケットボールの練習をしていた。大半が60代で、20代の姿も。そんな中、75歳の川戸政角(まさすみ)さんの動きは、いい意味で目立たない。身長184センチ、体重75キロの体格を生かし、5人対5人の実戦形式の練習では近距離のシュートを複数回沈めた。
蒸し暑い館内での2時間の練習中、動きは終始機敏。周囲に全く後れを取らず、ベンチで戦況を見守っていた20代の男性は「自分があの年になったとき、あんなプレーができるかな」と苦笑いを浮かべた。
昭和26年、横浜市に生まれた川戸さん。中学入学後、1年間で身長が10センチ以上伸びて176センチになり、友人に誘われて2年から競技を開始。高校では膝を負傷して満足に動けなかったが、20歳のときに入部した高校OBのクラブチームで横浜市民大会準優勝。県選手権でベスト4に入ったこともある。
還暦で大会立ち上げ、WMGはキャリアの集大成
還暦を迎えたとき、自身が参加できる大会がないことに気付き、平成23年に60歳以上を対象にした「横浜カップ」を立ち上げた。シニア向け大会の先駆事例となり、現在は70歳以上など年齢区分がさらに上の大会も各地で開催されている。
ハードな動きも多い競技なので、選手寿命は70代が限界と自覚する。先輩に90代の審判がいるといい、「80代になったら審判として全国の大会で笛を吹きたい」。その80代まで5年を切り、今回のWMGへの思いはひとしおだ。昨年の台湾大会など、すでに過去2大会に出場経験がある。チーム名は「サムライシニアボーラーズ」。キャプテンとして、キャリアの集大成に位置付ける大会で頂点を目指す。
20歳で競技復帰して半世紀以上。継続のカギを尋ねると、「今はできない技でも、数年後にできるようになればいいというマインドだね」と汗をぬぐった。
陸上72歳、行動をパターン化し「単にアスリート」
滋賀県に住む曽野政男さん(72)は陸上競技でWMGに出場する。午前4時半に起床し、午後9時には就寝。朝食は自家製の卵サンド、ボイルした豚肉4切れ、トマト4切れ、手作りのポテトサラダと決めている。選択肢があると迷い、ストレスになるため、日常の基本的な行動は全てパターン化した。
三重県に生まれ、10歳の時にテレビで見た東京五輪のマラソンランナーに魅せられて陸上競技を始めた。高校卒業後、陸上自衛隊体育学校に入学。全日本クロスカントリーで優勝するなどの実績が実業団の目に留まり、転職した。総監督などを務めつつ、選手としてレース出場を重ねた。
定年退職後、世界大会での金メダル獲得という夢をかなえるため、当時「大人のオリンピック」というキャッチコピーを掲げていたWMGを目指した。過去2度出場し、複数種目で金メダルを獲得。今回はまだ届いていない2000メートル障害の制覇などを目標に据える。
「高齢アスリート」という呼称を拒む。「練習メニューも、はいているスパイクさえも、20、30代のトップ選手と変わらない。自分は単に『アスリート』だ」。シニア世代のスポーツは、健康寿命の延伸やリハビリが目的と認識されがちだが、「自分のように本気で取り組んでいる人もいる。『すごい』と社会に思われるような、圧倒的なインパクトを残したい」と言い切った。
WMGとは
スイス・ローザンヌに本部を置く「国際マスターズゲームズ協会(IMGA)」が主催する、4年に1回の大会。原則30歳以上であればエントリーできる。年齢のほか競技レベルによってカテゴリーを設定。100歳以上に参加枠がある競技もある。1985年のカナダ・トロントでの第1回大会以来、規模が拡大。昨年の台湾大会は107の国・地域から2万5000人超が参加した。
日本・関西大会は2021(令和3)年に予定されていたが、新型コロナウイルス禍で来年に延期。関西を舞台に、5月14~30日の日程で35競技・59種目が実施される。



