教員の「相互不干渉」が生む異論のなさ 同志社国際高校の事故から考える学校風土の問題点
教員の相互不干渉が生む異論のなさ 同志社国際高校の事故から考える学校風土の問題点

文部科学省は同志社国際高校の教育内容が教育基本法に違反するとして是正を指導した。この背景には、教員間で「異論」が出にくい学校特有の風土が存在する可能性がある。教育現場では、対立を避けるあまり、建設的な意見交換が阻害され、重大な問題が見逃されるリスクが指摘されている。

心理的安全性の欠如が生む沈黙

心理的安全性の研究で知られるエイミー・エドモンドソン教授は、「心理的安全性は、感じよく振る舞うこととは関係がない」と述べる。同教授は著書『恐れのない組織』(英治出版)で、「心理的安全性は、率直であることであり、建設的に反対したり気兼ねなく考えを交換し合ったりできること」と定義する。また、「どんな職場でも対立は必ず起きる。心理的安全性があれば、異なる意見をもつ人同士が、納得がいかない点を率直に話せるようになる」と指摘する。

しかし、日本の学校現場では、教員同士の「相互不干渉」が蔓延し、異論を唱えることがタブー視される傾向がある。特に、人事異動が少なく長期間同じ職場で働く教員は、人間関係の悪化を恐れて発言を控える可能性が高い。このような風土は、事故や問題の芽を早期に摘むことを難しくする。

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タスク・コンフリクトとリレイションシップ・コンフリクトの混同

職場の対立には、仕事の内容に関する意見の対立を指す「タスク・コンフリクト」と、人間関係上の敵意や怒りに基づく「リレイションシップ・コンフリクト」がある。さらに、役割や権限、締め切り、仕事配分に関する対立を「プロセス・コンフリクト」と呼ぶこともある。

学校では、これらの対立が混同されるケースが少なくない。例えば、若手教員が大学で学んだ知識をもとに先輩教師に授業改善の意見を述べた場合、それはタスク・コンフリクトであるべきだが、「生意気だ」「自分を嫌っているのか」とリレイションシップ・コンフリクトにすり替えられる危険性がある。修学旅行中の安全対策の不備を指摘することも、本来はタスク・コンフリクトだが、長期的な人間関係への影響を恐れて発言を控える教員もいるだろう。

組体操の危険性から学ぶ教訓

教育社会学者の内田良教授は著書『教育という病』(光文社新書)で、運動会で危険性の高い組体操が続けられてきた理由として、団結や感動といった教育的意義に注目し過ぎたことを挙げている。安全面への懸念が軽視され、異論が封じられてきた構図は、同志社国際高校のケースとも共通する。

学校現場では、伝統や慣行を重視するあまり、批判的な意見が歓迎されない風土が根強い。しかし、事故の再発を防ぐためには、教員間の心理的安全性を高め、タスク・コンフリクトを建設的に活用する仕組みが必要だ。

今後の検証と改善の必要性

本稿では、同志社国際高校で異論が出なかった理由について複数の仮説を提示した。これらの見立てが正しいかどうかは今後の検証課題だが、事故の記憶が新しいうちに、他校でも同様のリスクがないか見つめ直すことは重要だ。子どもたちの犠牲を繰り返さないためにも、学校現場の風土改革が急務である。

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