東京都千代田区にある麹町学園女子中学校高等学校は、2026年度から中学のコース制を廃止し、共通クラスに一本化するなど、大規模な教育改革に着手した。これに合わせ、オリジナル授業「みらい科」の内容を刷新し、教員による「学習力向上プロジェクト」も発足した。就任2年目の大久保靖校長が、改革の狙いや展望を語った。
中学コース制を共通クラスに一本化
大久保校長は、青山学院大学大学院文学研究科を修了後、1983年に東京電機大学中学校・高等学校の地理歴史科教諭となり、2016年度から20年度まで同校校長を務めた。24年に退職し、翌25年4月から現職に就いた。
女子教育に携わるのは初めてだが、長年大学付属の共学校に勤めた経験から、学校法人組織の中での学校運営には経験と実績があると語る。「前任校で校長を務めた経験を生かして、しっかりとした組織的なガバナンスを確立したい。麹町学園を持続可能な組織にすることが私の役目だ」と強調する。
本校はおおらかで優しい生徒が多く、穏やかな校風だ。「こうした校風の中で、生徒たちがのびのびと過ごせるよう、より安心で安全な学習環境を作っていきたい。生徒をお預かりする学校として、保護者に安心してお子さんを託していただくことが最も大切。その点を学校運営の基本方針にしたい」と述べた。
全員が同じ授業で多様な経験を
今年度から中学では、これまでのグローバルコース、サイエンス探究クラス、スタンダードコースの3コース制を廃止し、中1から全員が共通クラスで学ぶことになった。従来のコース制は生徒の適性に応じて英語や理科を手厚く学ぶ設計だったが、校内での話し合いを経て、「英語も理科も一部の生徒に向けて限定的に行うのではなく、全員が同じ授業を受けてさまざまな経験を積んだほうがいい」という結論に至ったという。
共通クラスにすることで年度替わりのクラス替えが可能になり、多様な個性を持つクラスメートとともに学ぶことで刺激を与え合い、成長できると期待する。高校は従来通りのコース制を維持する。
コース制改革に加え、授業内容も全生徒が興味を持って探究力を養えるようアップデートしている。例えば、オリジナル探究学習「みらい科」では、グローバル教育の一環として中1から高1で「Global Competence Program」を導入。また、プログラミング教育として中1と高1に、ロボットでパラスポーツのボッチャを競技する「ロボッチャ」を新たに取り入れた。
「学習力向上プロジェクト」で自走する教員に
今年度から始動した「学習力向上プロジェクト」について、大久保校長は「安心で安全な学校」という基本方針のもと、「当たり前のことが当たり前にできる体制を作りたい。学校における『当たり前』とは、いい授業をすることだ」と説明する。中学の教員を中心に5月から5人のメンバーで活動を開始した。
プロジェクトの目的は、「生徒自身が進んで学びに向かおうとする授業とはどのようなものか」を研究することだ。「授業力向上」ではなく「学習力向上」と名付けたのはそのため。教科の枠を外し、メンバーが互いの授業を見学し、どのような働きかけが生徒の自発的な学びを促すのか、共通性を見いだす試みだ。東京大学の先生もアドバイザーとして参加し、本校の生徒に適した働きかけを考える。
「自走する学習者」を育てると同時に、教員自身も「自走する教員」である必要があると大久保校長は強調する。
読書で知的好奇心を刺激
生徒と交流する際に意識していることとして、大久保校長は始業式や終業式、学年集会などで毎回一冊の本を紹介しているという。「知的好奇心を満たすための能動的な行動として、読書が一番お薦め。私自身が好奇心の塊で、子供の頃から興味を持ったことはとことん調べないと気が済まない性格だった。その経験が今の基盤になっている。生徒たちにも読書体験をしてほしい」と語る。
紹介する本は小説や「ちくまプリマー新書」から選ぶことが多い。読んでくれた生徒と自分との間で同じ体験を共有でき、さらに生徒が友人に薦めたり、関連本を読んで自分に薦めてくれたりする広がりを期待している。
たくましさとチャレンジ精神を
生徒にどのように成長してほしいかという問いに、大久保校長は「学校が安心安全な場であることは大前提だが、守られていただけでは社会に出た時に困難に立ち向かえない。壁にぶつかったとき、その壁を乗り越えられるたくましさを身に付けてほしい」と答えた。
「本校の生徒には、失敗してもいいから挑戦しようというチャレンジ精神が足りない気がする。失敗を恐れるより、失敗から学ぼうという気持ちで、今まで経験したことがないことに挑戦してほしい。社会に出ると、『何かおかしいな』『こうあるべきじゃないかな』と感じる場面に遭遇するだろう。そう思ったとき、できる範囲で自分から動いて変えていこうとする意欲が挑戦であり、生きる力だと思う」と語った。
受験生と保護者へメッセージ
受験生と保護者に向けて、大久保校長は「本校には、入学した1年生を全校で温かく迎え入れるアットホームな雰囲気と伝統がある。安心で安全な学習環境を整えているので、ぜひ来ていただきたい。好奇心旺盛で、小さな歩幅でも自分の足で一歩一歩前に進んでいこうという気持ちを持ったお子さんに来ていただきたい」とメッセージを送った。
(文:岡崎智子 写真:中学受験サポート 一部写真提供:麹町学園女子中学校高等学校)



