スポーツ選手の性的撮影被害続発、撮影禁止や許可制広がる…条例制定の自治体も
選手の性的撮影被害続発、禁止や許可制の動き…条例も

スポーツ選手が性的な目的で写真や動画を撮られる被害が後を絶たず、観客の撮影を禁止したり、許可制にしたりする動きが広がっている。着衣の上から撮影する行為を直接禁じる法律がなく、主催団体が自衛措置を余儀なくされている形だ。条例を制定して後押しする自治体も出ている。

撮影禁止の注意書きも、注意しても聞かず

横浜市で7月に開かれたビーチバレーの「ジャパンツアー第5戦 横浜赤レンガ倉庫大会」では、選手の撮影禁止を伝える放送が繰り返し流された。主催する日本バレーボール協会によると、これまではスマートフォンに限って写真や動画撮影を認めていた。ところが、5月に愛知県碧南市で行われた別の大会の予選で、観客が女子選手の胸や尻を狙って撮影するケースが続出した。スタッフが注意しても聞かない人が多く、翌日から全面禁止にした。

自身の尻をアップにした試合中の動画をユーチューブに無断で載せられた経験を持つ衣笠乃愛選手(25)は、「プレー以外に焦点を当てた動画や画像を悪用されるのはいい気持ちはしない。本来の魅力と違う形で競技が認知されるようで悔しい」と話す。禁止後にはサングラスに内蔵された小型カメラで撮影する男性も現れ、協会の川合庶さんは「好プレーをSNSなどで発信してもらえば宣伝にもなるが、悪質なケースが多すぎる」と憤る。

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法律の限界、競技団体は独自対策

法務省によると、2023年7月に施行された「性的姿態撮影処罰法」で禁じられたのは下着姿などの撮影に限られ、ユニホームや制服を着た状態では適用できないという。このため、競技団体は被害防止のために独自の対策を取らざるを得ない状況だ。スポーツ庁が24年、日本オリンピック委員会(JOC)などに加盟する126団体に調査したところ、回答した113団体の3割(36団体)が「撮影禁止や許可制、撮影可能エリアの指定」を導入していた。

日本体操協会は23年5月のNHK杯から、体操選手の撮影を許可制とした。撮影を希望する人に事前登録を求めた上で、許可証を1000円で販売している。撮影した画像や動画を確認できるよう、SNSアカウントの登録も条件とし、スマホのカメラによる撮影に限った。同協会の遠藤幸一さんは「体操は鍛え抜かれた美しい技を見せる競技。その魅力を広めたいと思ってくれるファンには機会を提供し、望まない撮影の排除と両立したい」と強調する。

条例で後押し、全国への波及に期待

性的な意図を持った撮影による被害防止を目的に、条例を設けた自治体もある。三重県は昨年10月、「性暴力の根絶をめざす条例」を制定し、同意や正当な理由なくアスリートを撮影する行為を「性暴力」と位置づけた。罰則はないものの、許されない行為という認識を定着させることが狙いだ。競技大会の運営者らには、被害防止のための措置を講じることを求めている。

「悪質な撮影者と戦う後ろ盾になる」。地元を拠点とする女子バレーボールチーム「ヴィアティン三重」の椎葉誠・事業部長は条例を歓迎する。条例の制定前、ビデオカメラで試合を撮影していた男性に動画をユーチューブに投稿しないよう求めたが、男性は「どこが性的なのか説明してほしい」などと答えたという。後日、投稿された動画には選手の股間部分が映っており、120万回以上再生されていた。

チームではビデオカメラや三脚などの使用を禁止し、今年7月からは「特定の選手を執拗に、継続的に撮影する」など18の禁止ルールを設けた。椎葉さんは「事業者と県が共に取り組むことで『三重では不当な撮影はできない』という認識につなげ、全国にも広げたい」と願っている。

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中京大スポーツ科学部の石堂典秀教授(スポーツ政策)は「悪質な撮影は選手に精神的なダメージを与え、競技者が減る要因にもなりかねない。過去に問題行為があった人物については、競技団体間で情報を共有し、観戦できないようにするといった仕組みも効果的だ」と話す。