WHO、設立以来最大の危機 米脱退で資金難、職員2400人削減へ
WHO、設立以来最大の危機 米脱退で資金難

世界保健機関(WHO)が、設立以来最大の危機に直面している。新型コロナウイルスやエボラ出血熱など世界的な感染症対策をリードしてきた同機関だが、米国の脱退表明による資金不足で職員約2400人の削減を余儀なくされ、その影響が感染症対策や途上国支援に及び始めている。

米国脱退で資金源が激減

WHOの最大の資金拠出国であった米国は、トランプ前大統領の下で脱退を宣言。予算全体の約15%を占めていた米国からの資金はほぼゼロとなった。これを受け、WHOは昨年11月に約2400人の職員を今年6月までに削減する方針を打ち出した。すでに感染症対策や途上国支援に影響が出始めており、国際保健の専門家からは懸念の声が上がっている。

コロナ禍で露呈した課題

WHOは2020年1月、新型コロナウイルスに対して「国際的な公衆衛生上の緊急事態」を宣言したが、その重要性が世界に十分に伝わらず、テドロス・アダノム事務局長は同年3月に「パンデミック(世界的大流行)」を改めて表明した。この対応の遅れは批判を招き、WHOはコロナ禍を教訓に国際保健規則を改正。緊急事態の中でも「広範囲に流行するリスクが高い」「社会経済的に重大な混乱を引き起こす」などの条件を満たす場合に「パンデミック緊急事態」を発出する新たな枠組みを導入した。

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天然痘撲滅などの功績

WHOは1948年4月、米国の主導で設立された国連専門機関の一つで、スイス・ジュネーブに本部を置く。最大の功績は天然痘の撲滅で、冷戦中にも米ソが協調し、患者の発見と周辺へのワクチン接種作戦を実施。1980年5月に根絶を宣言した。また、2005年には「たばこの規制に関する枠組み条約」を発効させ、受動喫煙防止やたばこ広告禁止を国際的に推進した。

今後の役割に限界も

国際保健に詳しい慶応大学の詫摩佳代教授は「資金面で苦しい状況を考えると、病気の撲滅や母子保健の普及に積極的に取り組むのは難しい。今後は指針やルールの策定などの任務に限られてくるだろう」と指摘する。WHOは加盟国への強制力を持たず、国際政治の影響を受けやすい構造的な課題も抱えており、今後の感染症対策におけるリーダーシップの発揮が懸念されている。

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