新型コロナワクチン接種、日本の高齢者で進まない理由
新型コロナワクチン接種、高齢者で進まない理由

日本の高齢者における新型コロナワクチンの接種率が、他の先進国と比較して低い水準にとどまっている。厚生労働省のデータによると、65歳以上の高齢者のうち、少なくとも1回の接種を完了した割合は約80%で、欧米諸国の90%以上を下回る。この背景には、接種に対するためらいや情報不足、アクセスの問題が複雑に絡み合っている。

接種率の国際比較と日本の現状

世界保健機関(WHO)の統計によれば、イギリスやドイツでは高齢者の接種率が95%を超える一方、日本は約80%と低迷している。特に、80歳以上の後期高齢者では接種率がさらに低く、75%程度にとどまる地域もある。この差は、ワクチンへの信頼や医療体制の違いに起因すると専門家は指摘する。

東京都健康長寿医療センターの研究チームが2023年に実施した調査では、高齢者の約15%が「ワクチンの副作用が心配」と回答。また、約10%が「効果に疑問がある」と答えている。これらの数字は、接種促進のための情報提供が不足していることを示唆している。

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接種をためらう主な理由

国立感染症研究所のインタビュー調査によると、高齢者が接種をためらう理由として、以下の点が挙げられる。

  • 過去の副反応への不安(特に発熱や倦怠感)
  • ワクチンの長期的な安全性が不明確
  • かかりつけ医が接種を勧めないケース
  • 予約システムが複雑で手続きが面倒

「近所のクリニックでは接種を扱っておらず、大きな病院まで行くのが大変」と、東京都内在住の80代女性は語る。このように、物理的なアクセス障壁も無視できない。

政府の対策とその課題

政府は2024年度から、高齢者向けの個別接種を強化する方針を打ち出した。具体的には、かかりつけ医での接種を推進し、予約不要のウォークイン接種会場を増設する。しかし、これらの対策はまだ効果を上げていない。

「地域によっては、接種会場が遠く、交通手段がない高齢者が多い。また、情報が届きにくいという問題もある」と、厚生労働省の担当者は認める。さらに、ワクチン供給の不安定さも課題だ。2023年秋には、モデルナ社製ワクチンの供給が一時滞り、接種スケジュールに影響が出た。

今後の展望と専門家の提言

感染症専門医の田中氏は、「高齢者の接種率を上げるには、地域密着型のアウトリーチ活動が不可欠。特に、訪問接種やコミュニティバスの活用など、きめ細かい対応が必要」と指摘する。また、医師会と連携した信頼回復キャンペーンも重要だ。

日本老年医学会も、高齢者に対するワクチン情報のわかりやすい発信を求めている。「副作用のリスクよりも、感染による重症化リスクがはるかに高いことを、具体的なデータで示すべき」と同会は提言する。

接種率の向上は、高齢者の健康を守るだけでなく、医療費の抑制や社会活動の維持にもつながる。政府は、実効性のある対策を早急に実行する必要がある。

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