下水分析による感染症早期発見の実証実験
神戸市は、下水を分析することで感染症の流行を早期に発見する実証実験を2024年7月から開始した。この取り組みは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックを契機に、下水疫学の可能性に着目したものだ。下水には、感染者の排泄物や皮膚片などからウイルスや細菌が含まれるため、その濃度を測定することで、地域の感染状況を把握できると期待されている。
実証実験では、市内の複数の下水処理場で定期的にサンプルを採取し、PCR検査や次世代シーケンサーを用いて病原体の遺伝子を検出する。特に、新型コロナウイルスだけでなく、インフルエンザウイルスやノロウイルスなど、複数の感染症を同時に監視できる体制を整える。これにより、従来の患者報告ベースのサーベイランスよりも数日から1週間早く流行の兆候を捉えることが可能になるという。
実証実験の背景と目的
神戸市は、2020年の新型コロナウイルス流行時から下水サーベイランスの研究を進めてきた。今回の実証実験は、その成果を実用化に近づけるための重要なステップだ。目的は、感染症の早期警戒システムを構築し、医療機関の負担軽減や迅速な対策の実施につなげること。また、将来的には薬剤耐性菌の監視や、麻薬などの違法薬物の使用実態把握にも応用できる可能性がある。
実証実験は、神戸市環境局と神戸大学、国立感染症研究所などの連携プロジェクトとして実施される。期間は約1年間を予定し、その結果を基に、本格的な運用の是非を判断する。費用は約5000万円で、国の補助金を活用する。
期待される効果と課題
下水分析による感染症早期発見のメリットは、感染者のプライバシーを侵害せずに、地域全体の感染動向を把握できる点だ。また、無症状感染者も含めたデータを得られるため、より正確な流行状況の把握が可能となる。一方で、課題としては、下水サンプルの採取方法や検査精度の標準化、コスト削減、リアルタイムデータの解析手法の確立などが挙げられる。
神戸市は、この実証実験を通じて、日本国内における下水疫学のモデルケースとなることを目指している。成功すれば、他の自治体への展開も視野に入れており、感染症対策の新たなツールとして期待されている。



