古川元法相が語る「国家の可動域」、日米協調介入と消費税減税の本質とは
古川元法相が語る国家の可動域と日米協調介入の本質

古川禎久元法相(自民党幹事長代理、税制調査会副会長)は、7月31日の日米協調介入や高市早苗首相が進める食料品の消費税率1%への引き下げをめぐる議論について、単なる財政再建や政策論ではなく「国家の可動域」を守るための問題だと指摘している。危機が連鎖し長期化する「ロング・エマージェンシー」時代において、通貨・国債・安全保障を一体で捉える構想の重要性を強調した。

日米協調介入と「マール・ア・ラーゴ合意」の入り口

7月31日、日米は協調して円買い介入に踏み切った。続いて財務省は8月3日、日本が将来的にFIMAレポ・ファシリティを活用する予定だと公表した。FIMAレポ・ファシリティとは、連邦準備制度理事会(FRB)が海外の中央銀行や国際金融機関向けに提供しているドル資金の供給制度で、保有する米国債を市場で売却せず、FRBとのレポ取引を通じて一時的なドル流動性を得る仕組みだ。

古川氏はこの動きを、「マール・ア・ラーゴ合意」の入り口になり得ると読む。マール・ア・ラーゴ合意は正式な国際合意ではないが、同盟国の米国債保有を超長期化し、安全保障の負担分担と結び付ける構想が論じられる中、円防衛、米国債、同盟管理が同じ政策空間に入り始めたことは見過ごせないと述べている。

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「財政規律派」ではなく「国家の可動域」の問題

古川氏は、食料品の消費税減税の議論が「積極財政派vs.財政規律派」という安易な対立構図に矮小化されていると指摘。「社会保障財源を毀損する」「物価高対策としては低所得者への給付のほうが速い」「消費税は一度下げたら元に戻せなくなる」「農家や小売り、外食産業の現場に重い負担を強いる」など、個別の政策論だけで異議を唱えているのではないと語る。

その根本にあるのは、第2次世界大戦後80年間続いた国際秩序そのものが崩れつつあるという時代認識だ。円の信用、外貨準備の運用・換金の自由度、食料・エネルギーの供給力、災害や戦争への備えを含め、危機の中でも国家が必要な政策を選べる余地――「国家の可動域」を残せるかという問題を問いかけている。

ロング・エマージェンシー時代の危機連鎖

古川氏は今の時代を「ロング・エマージェンシー(長期にわたる非常事態)」と呼ぶ。これまで平時と非常時を分けて考えてきたが、今は一つの危機から回復し切る前に次の危機が来る。戦争、災害、感染症、エネルギー、食料、金融といった危機が別々に起きるのではなく、互いに連鎖し、増幅する。危機が連鎖し、長期化し、日常化するのがロング・エマージェンシーだと説明する。

具体的には、戦争によるホルムズ海峡危機が長期化し、原油や天然ガスの流れが滞れば、肥料、農業、物流を通じて食料価格に跳ね返る。そこに円安が重なれば輸入物価が上がり、政府が補助金や減税を重ねれば財政が傷み、金利を抑えれば円の信認も問われる。一つの危機への対策が、別の危機を招くことさえあるという。

また、7月28日の熊本地震への対応が続くさなか、千葉を記録的豪雨が襲い、病院機能が止まった。電源や排水という一つの「急所」が失われるだけで、巨大なシステム全体が動かなくなる。豪雨は一晩で終わっても、復旧には何週間、何カ月とかかる。その間にまた次の危機が来るかもしれない。ロング・エマージェンシーとは、「非常事態が終わるのを待てば元に戻る」という前提が崩れることだ。だから国家設計も、「危機への事後対応」から「危機が続いても暮らせる国をつくる」へ転換しなければならないと古川氏は述べている。

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