日本国内で開発された農産物の新品種が無断で海外に流出する事態が後を絶たない。最近では、愛媛県が開発した高級かんきつ「紅プリンセス」の苗木が中国に流出した疑惑が発覚した。また農林水産省の昨年の調査では、約50のブランド農産物の苗木や果実が中国や韓国のネット通販サイトで販売された可能性が指摘された。
世界でも人気の高い農産物の流出は日本からの輸出機会を奪う。海外での生産で支払われるべき許諾料も得られない。中韓に流出した高級ブドウ「シャインマスカット」の損失は年200億円弱ともみられる。
改正種苗法の柱
新品種を開発・育成した農業関係者の知的財産を侵害する行為は許容できない。官民で対策を強めるのは当然である。先の国会で成立した改正種苗法は、そのための重要な手立てとなろう。品種登録の完了前でも無断輸出を差し止められるようにしたことなどが柱だ。
品種登録すれば生産や販売などを独占できる「育成者権」が付与されるが、出願から登録までに3~6年を要する。このため登録完了前に流出したとされる例もあり、改正法で出願中でも無断輸出を阻めるようにした。育成者権の適用期間の10年延長も盛り込んだ。果樹は現行の30年間が40年間になる。
新機関の始動
いずれも育成者権を強める措置だが、これのみで流出を防げるわけではない。水際対策の強化はもちろん、流出が認められたときには法的対応なども徹底しなければならない。注目されるのは、官民の農業関係者が準備してきた育成者権管理機関が7月、農水省の認定を受けて始動したことだ。育成者権者と契約した上で海外流出を監視し、権利侵害があれば訴訟にも踏み込む役割を担う。
流出防止でやっかいなのは国ごとに品種登録しなければならず、無断栽培時の差し止めなども現地で求めなければならないことだ。紅プリンセスは中国で登録申請中だが、完了していなかった。そのような場合の対応を個々の自治体などが行うのは負担が重く、専門組織に委ねるのは合理的だ。効果的に運用できるかが問われる。
政府間対話の重要性
政府間の対話も重要だ。鈴木憲和農水相は、新品種の無断流出がなくならない現状を改善するよう、中韓両政府などに強く要請すべきだ。



