高市早苗首相は、一体何を守ろうとしているのだろうか。中傷動画を拡散させて他候補を貶めるような卑怯な行為をしない政治家としての矜持か、それともそのために懸命に働く公設秘書の名誉を守るための誇りか。昨年の自民党総裁選を勝ち抜き、2月の衆院選で歴史的大勝を収めた高市首相は、史上初の女性首相として大胆な行動で新しい政治を切り開くとの期待を集め、高い支持率を維持している。その政治的基盤が強固であれば、憲法改正や皇室典範の改正といった国論を二分する難題も実現可能と見られていた。
疑惑をめぐる答弁の揺れ
しかし、週刊文春が報じた自民党総裁選における中傷動画作成疑惑をめぐり、首相の国会答弁や記者会見での発言は揺れに揺れている。当初は他候補の誹謗中傷を一切行っていないと否定し、動画作成者との面識もないと断言していた。ところが、週刊誌に加えて共同通信が動画作成者へのインタビュー記事を配信し、秘書と作成者が打ち合わせを行ったとされる音声も公開された。これにより、首相は「秘書を信じる」と事実確認を拒否していた姿勢から、秘書と作成者の接点を否定できない状況に追い込まれた。秘書は音声が自身のものか確信が持てないとしながらも、会合に出席した事実を認めた。
「揺るがない」から「確信が持てない」へ
「一切面識がないという答弁は揺るがない」と強気だった首相が、「面識があるかどうか確信が持てない」と後退するまでに1カ月以上を要した。さらに、事実関係を否定してきたのは、首相が信頼する秘書の「勘違いだった」と認めざるを得なくなり、まさに「答弁崩壊」とも言える事態に陥った。この間、首相の支持率は依然高いものの、疑惑への対応の不透明さが自民党内に微妙な空気を広げている。
麻生太郎の悲願と男系男子養子案
この混乱の中で、麻生太郎副総裁が長年悲願としてきた「男系男子の養子案」が現実味を帯びてきた。高市首相の立場が不安定になるほど、麻生氏の影響力が増し、皇室典範改正による男系維持策が推進される可能性がある。自民党内では、首相の疑惑対応に不満を抱く保守派が麻生氏に接近し、養子案を後押しする動きも見られる。しかし、党内には「首相の疑惑が収束しないまま皇室問題を議論するのは時期尚早」との慎重論も根強い。
今後の展望
高市首相が中傷動画疑惑を乗り越えられるかどうかが、今後の政局の鍵を握る。もし首相が答弁の揺れを克服し、支持を取り戻せば、男系男子養子案は後退する可能性がある。逆に、疑惑が長引けば、麻生氏の悲願が実現する流れが加速するだろう。いずれにせよ、自民党内の微妙な空気は、今後の政治日程に大きな影響を与えそうだ。



