政治・経済・投資 #新競馬好きエコノミストの市場深読み劇場
結局「覚書」締結で、当面の相場は「TACO」に賭けていた側の勝ち、だが「イラン戦争」は本当に終結できるのだろうか
公開日時:2026/06/20 06:30
トランプ大統領はヴェルサイユ宮殿で覚書に署名した(写真:ブルームバーグ) かんべえ(吉崎 達彦) 溜池通信代表
1/5 PAGES 2/5 PAGES 3/5 PAGES
その点、今年のイラン攻撃は2月28日に始まって6月17日に終わったことになる。数えてみたら「110日間戦争」ということになる。「6日間」や「12日間」のようにスッキリとはいかなかった。それでは、今回の「第2次イラン攻撃」をどう評価すべきだろうか。
あまりに非対称的な「110日戦争」の内実
野球の試合に例えれば、アメリカとイスラエルが「10対1」の大差でイランを下したワンサイドゲームだった。最高指導者ハメネイ師を含むトップ層を一気に殺害し、米軍側の被害はほとんどない。AIや精密誘導弾を駆使した今日的な戦争だったということになる。
だが両国は本来、「10対ゼロ」で勝たねばならなかった。完封してイランの「レジームチェンジ」を果たしてこそ、戦略目標を達成できるはずであった。しかるにイランの体制はしぶとく生き残り、イスラエルや湾岸産油国の米軍基地に対して反撃に出た。そしてホルムズ海峡を封鎖して、世界経済を人質にとってしまったわけである。
なおかつイランの革命防衛隊は、低コストのドローンを使って、米軍の高価な巡航ミサイルを浪費させた。ミサイルの在庫が少なくなった米軍は、湾岸の同盟国を防衛しきれなくなっている。このことはアラブ世界におけるアメリカへの信頼を失墜させた。
要はこの戦い、あまりにも非対称的なのである。イランは10点取られても平気で、体制が生き残れば「勝ち」である。逆にアメリカとイスラエルは、敵方に得点されたわずか1点が耐えられない。それは国内的に不評となるからだ。そしてトランプ大統領は11月3日に中間選挙があり、ネタニヤフ首相も10月末までに総選挙を迎えなければならない。
この状況、かつて戦略家エドワード・ルトワックが「ポスト・ヒロイック時代」と呼んでいたものを想起させる。その昔、お国のための「戦死」は高貴な犠牲であり、英雄的(ヒロイック)な行為とされた。しかるに社会が豊かになり、少子化が進むようになると、軍としてはごくわずかな犠牲であっても、政治的にもたなくなってしまう。
つまり今のアメリカ社会においては、戦死への耐性が低下している。対イラン攻撃で地上戦に突入することはリスクが高すぎるし、長期にわたる消耗戦などは論外である。空爆や特殊部隊、サイバー攻撃などを使った「安全な作戦」だけが許される。これではアメリカが、イランに対する交渉で優位に立てるはずがないではないか。
次ページが続きます:【本当に最終合意に至るのか?】
4/5 PAGES 5/5 PAGES



