欧州の自動車業界が電気自動車(EV)販売の減速という逆風に直面し、構造的な変革を迫られている。フォルクスワーゲン(VW)は87年続けたドイツ国内工場の閉鎖を初めて検討しており、ステランティスやメルセデス・ベンツ・グループも大規模なコスト削減策を打ち出している。背景には、EV需要の伸び悩みに加え、中国勢の低価格EVの流入や欧州連合(EU)の厳しい排ガス規制がある。
VW、ドイツ工場閉鎖の可能性
VWは9月、ドイツ国内の自動車工場を少なくとも1カ所閉鎖する可能性があると発表した。同社はこれまでドイツ国内に約10の工場を構えてきたが、EVシフトに伴う需要減少と競争激化で収益が悪化。労使交渉では、賃金削減や雇用保障の解除も議題に上がっている。VWのブルームCEOは「欧州市場のEV需要は想定の半分以下だ」と述べ、コスト構造の抜本的な見直しが必要だと強調した。
ステランティスとメルセデスもコスト削減
ステランティスは10月、米国ミシガン州の工場で約1100人の従業員を一時解雇すると発表。さらに、イタリアの工場では生産を停止し、欧州全体で生産調整を進めている。メルセデス・ベンツも9月、中国市場での販売低迷を受け、2025年までにコストを20%削減する計画を明らかにした。同社のカレニウスCEOは「厳しい市場環境に対応するため、効率化を加速する」とコメントした。
中国EV勢の脅威とEUの対応
欧州自動車メーカーの苦境をさらに深刻化させているのが、中国のEVメーカー、特に比亜迪(BYD)や上海汽車(SAIC)の存在だ。BYDは2023年に欧州での販売台数を前年比で約4倍に伸ばし、低価格モデル「シール(SEAL)」で市場を攻略。EUは10月、中国製EVに対する追加関税を最大45%に引き上げることを決定したが、欧州メーカーの競争力回復には時間がかかるとみられる。
雇用への影響と政府の対応
欧州自動車業界の雇用削減は加速している。ドイツ自動車工業会(VDA)の試算によると、2024年だけでドイツの自動車関連雇用は約2万人減少する見通し。ドイツ政府は7月、国内のEV充電インフラ整備に約30億ユーロを追加投資する方針を発表したが、業界団体は「需要喚起策が不十分だ」と批判している。
専門家の見解と今後の展望
自動車業界アナリストのフェルディナント・デューデンヘーファー氏は「欧州メーカーはEVへの移行で中国勢に後れを取った。今必要なのは、バッテリー技術への投資と生産コストの削減だ」と指摘する。一方、欧州投資銀行(EIB)は2024年9月、EV関連の研究開発に20億ユーロの融資枠を設定。業界の再編は避けられず、2025年以降も厳しい競争が続く見通しだ。



