世界的な電気自動車(EV)販売の減速傾向が報じられる中、中国市場は依然として力強い成長を維持している。2023年の中国におけるEV販売台数は前年比35%増の約760万台に達し、世界全体の約60%を占めた。この成長を牽引するのは、BYDをはじめとする中国新興メーカーの積極的な戦略だ。
低価格EVの攻勢と市場拡大
BYDは2023年に約300万台のEVを販売し、世界販売台数でテスラを上回った。同社の強みは、低価格帯モデルの充実にある。主力の「海鷗(シーガル)」は日本円で約100万円から購入可能で、中国の地方都市や新興国市場で需要を拡大している。また、BYDは独自開発のブレードバッテリーやeプラットフォーム3.0により、コスト競争力と安全性を両立させている。
さらに、蔚来汽車(NIO)や小鵬汽車(XPEV)などの新興メーカーも、高度な運転支援システムやバッテリー交換サービスといった差別化戦略で市場シェアを拡大している。NIOは2024年に低価格ブランド「オンボ(Onvo)」を立ち上げ、20万元(約400万円)以下の市場に参入する計画だ。
中国政府の支援策と市場環境
中国政府はEV普及を国家戦略と位置づけ、購入補助金や税制優遇措置を継続している。2024年には、EV購入時の自動車購入税免除を2027年まで延長する方針を発表した。また、充電インフラ整備にも積極的で、2025年までに全国で2000万基の充電スタンド設置を目標に掲げる。
一方で、欧米諸国による中国EVへの関税引き上げの動きが懸念材料だ。米国は2024年に中国製EVに対する関税を100%に引き上げ、EUも追加関税の検討を進めている。しかし、中国EVメーカーは東南アジアや南米など新興市場への輸出を強化しており、影響は限定的との見方もある。
技術革新と競争の行方
中国EV市場の競争は激化しており、価格競争による淘汰も進んでいる。2023年には、かつて大手だった威馬汽車(WM Motor)が破綻するなど、生き残りをかけた戦いが続く。一方で、華為技術(ファーウェイ)や小米集団(シャオミ)などIT企業のEV参入も相次ぎ、スマートフォンとの連携や自動運転技術で差別化を図っている。
業界関係者は「中国市場は規模と技術革新のスピードで世界をリードしている。価格競争は一時的なものであり、長期的にはバッテリー技術や自動運転の進化が成長を牽引する」と指摘する。中国EVの海外進出も加速しており、BYDは2024年に日本市場で3車種を発売し、販売網を拡大中だ。



