築30年の空き団地が、移住者向け賃貸住宅「ホシノマチ団地」として生まれ変わり、入居希望者が殺到する「移住者の聖地」となっている。かつて5年以上入居希望がゼロだった物件が、どのようにして人気を集めるようになったのか。その背景には、教育や農業など多様な移住ニーズと、団地が地域との「中継地点」として機能するユニークな運営方法があった。
教育移住者の増加が団地再生のきっかけに
長野県佐久市にあるホシノマチ団地は、もともと築30年の古い団地で、空室が目立っていた。しかし、移住者専用の賃貸住宅としてリニューアルしたところ、特に「教育移住」を目的とする家族連れの入居が増加。子供の教育環境を求めて都市部から移り住むケースが目立つという。
団地の管理を行う牧原さんは、「教育に関心のある家庭が多く、地元の学校や塾の情報交換も活発に行われている」と話す。実際、入居者からは「湿度が低くカラッとしている」「夏でも夜は涼しい」「雪が少ない」「佐久平に出て新幹線に乗れば、東京方面にも出やすい」といった声が聞かれる。
農業志向の移住者も集まるシェア農園
教育だけでなく、農業への関心も移住の大きな動機となっている。「農業をやりたい」と考えてホシノマチ団地に行き着く人も少なくない。農業に関心のある入居者が集まり、耕作放棄地を借りてシェア農園として野菜を育てたこともあった。さらに、退去後にりんご農家になった人や、牧場を開いた人もいる。
牧原さんは「移住のきっかけは人それぞれだが、実際に暮らしてみると佐久の気候や利便性が実感できる」と語る。都市部へのアクセスの良さと、落ち着いた田舎暮らしのバランスが、多くの移住者を惹きつけている。
団地が「中継地点」として地域と移住者をつなぐ
ホシノマチ団地の最大の特徴は、移住者と地域を結ぶ「中継地点」としての役割だ。牧原さんは「団地内の交流を大事にしたい人もいれば、自分のスキルや経験を生かして地域に関わりたいという人もいます。関わり方の距離感は本当に一人ひとり違います」と説明する。
スタッフは地域の情報を収集し、全員に共有するだけでなく、「これはあの方に合いそうだな」と個別に声をかけることもある。逆に入居者から情報を得ることもあり、団地が情報のハブとなっている。
これまでに入居者が主体となり、料理教室やコーヒーの試飲会など、得意分野を生かしたさまざまなイベントが開催されてきた。ただし、濃密な交流を前提としているわけではなく、団地を拠点にそれぞれ無理のない形で生活し、自治会やお祭りなどを通じて地域に溶け込んでいく。
地域で暮らし始めるための入り口として
牧原さんはホシノマチ団地を「地域で暮らし始めるための入り口のような存在」と表現する。移住者がまず団地に住み、地域との接点を作りながら、最終的には団地を出て地域に根付くケースも多いという。
築30年の元ガラ空き団地は、今や移住希望者が殺到する人気物件に変貌した。教育や農業など多様な目的を持つ移住者を受け入れ、地域との橋渡しをするそのモデルは、他の過疎地域でも参考になりそうだ。



