中国政府が自国民に日本への渡航自粛を要請したにもかかわらず、2025年の訪日外国人客数は過去最多の4270万人に達し、旅行消費額も約9.5兆円と過去最高を記録した。中国人旅行者は半減したが、韓国、台湾、米国などからの観光客が増加し、日本の観光業は中国依存からの脱却を加速させた。
中国政府の渡航自粛要請とその影響
高市早苗首相による2024年11月の「存立危機事態」発言を受け、中国政府は強く反発。自国民に対し、日本への渡航自粛を要請した。これは事実上の経済制裁であり、日本の観光業に深刻な打撃を与えると懸念された。しかし、実際の影響は限定的だった。
ブルームバーグは2025年11月、旅行データ専門の調査会社チャイナ・トレーディング・デスクの予測として、中国からの訪日旅行予約の約30%がキャンセルされ、年末までの消費損失額が最大12億ドル(約1900億円)に達すると報じた。同社のスブラマニア・バットCEOは、中国人旅行者が2026年まで来日を控えれば、累積損失は最大90億ドル(約1.4兆円)に膨らむと述べていた。
実際の数字が示す意外な結果
しかし、2025年の年間統計が発表されると、予測は覆った。米旅行業界専門誌スキフトは2026年1月、訪日外国人数が前年の3690万人を大幅に上回り、過去最多の4270万人に達したと報じた。旅行消費額も約9.5兆円と過去最高を記録した。
2026年2月の訪日外客数も前年同月比6.4%増と、中国人観光客の低迷が続く中でも増加に転じた。中国政府の渡航自粛要請は、結果的に目標を達成できなかった。
中国人客の減少と他国からの増加
2025年、中国からの訪日客は前年比61%減の38万5300人に落ち込んだ。日本政府観光局のデータによると、2026年1月の訪日外客数は前年同月比4.9%減の360万人と、4年ぶりに前年実績を下回った。全体を押し下げた主因は中国人客の急減だった。
しかし、減少分を補う形で韓国、台湾、米国、東南アジアなどからの観光客が増加した。特に韓国からの訪日客は前年比20%増、台湾からは15%増、米国からは12%増となり、日本の観光業は多様な市場からの需要を取り込むことに成功した。
百貨店など小売業にも波及効果
中国人客の減少は百貨店にも影響を与えたが、高島屋や三越伊勢丹はV字回復を遂げた。高島屋の2025年度売上高は前年比8%増、三越伊勢丹も同10%増と好調だ。これは、中国人客に代わって韓国や台湾、東南アジアからの観光客が高級品を購入したためだ。
地方都市にも波及効果が見られ、北海道や九州では韓国や台湾からの観光客が増加し、宿泊施設や飲食店の売上を押し上げた。
日本観光業の強さと脱中国依存
今回の事態は、日本の観光業が中国市場への依存度を低下させ、多様な観光客を引き付ける強みを持っていることを浮き彫りにした。海外メディアは、中国の渡航自粛要請がかえって日本の脱中国依存を加速させたと報じている。
日本政府観光局の担当者は、「中国人観光客の減少は一時的なものだが、他国からの観光客増加により全体の数字は堅調に推移している。今後も多様な市場へのプロモーションを強化し、持続可能な観光産業を目指す」とコメントしている。



