伊藤博文暗殺の安重根遺墨、日本に眠る約200点を追跡 韓国で高騰する「愛国の象徴」
伊藤博文暗殺の安重根遺墨、日本に眠る約200点を追跡

安重根の遺墨、日本に眠る200点の謎

伊藤博文を暗殺した独立運動家・安重根(アン・ジュングン)の遺墨が、日本各地に約200点存在すると推定されている。しかし、所在が確認されているのは約60点に過ぎず、残りは個人宅などに眠ったままである。龍谷大学が所蔵する「獨立」の掛け軸は、韓国側で高い関心を集めている。

安重根は1910年、旅順の刑務所で死刑を待つ間、日本人の司法関係者や看守らの求めに応じて揮毫を行った。その堂々とした態度に感銘を受けた人々が遺墨を家宝として日本に持ち帰った。これらは個人の所有物であるため、政府ルートでの返還交渉は難しく、売買が中心となっている。

遺墨が韓国に渡る3つのルート

遺墨が韓国に渡るルートは主に3つある。1つ目は「寄贈」で、日本人の子孫が韓国側に提供するケース。ソウルの安重根義士記念館などに展示されている作品の多くがこの形で渡った。2つ目は「購入」で、所有者の世代交代に伴いオークションで売却される。3つ目は「長期貸与」で、日本側に所有権を残しつつ韓国に一定期間貸し出す方式。東京都立の蘆花記念館が所蔵する遺墨をたびたび韓国に貸与している。

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韓国市場で異例の高騰、億円単位の落札

ここ数年、安重根の遺墨は韓国の美術市場で高騰を続けている。2023年以降、落札価格は10億~20億ウォン(約1億~2億円)に達し、韓国書道作品の競売記録を更新している。背景には、韓国企業による文化財保護支援や博物館・自治体の収集競争がある。安重根の遺墨は「愛国の象徴」として展示施設の目玉作品となっているためだ。

2023年12月、ソウルオークションでは「龍乕之雄勢豈作蚓猫之態」が19億5000万ウォンで落札され、韓国書道作品の競売史上最高額を記録した。2024年2月には「人心朝夕變 山色古今同」が13億ウォンで落札され、落札した半導体製造装置メーカーの創業者が独立運動家の子孫であることも話題となった。2025年には「長嘆一声 先弔日本」が24億ウォンで韓国側に売却されたと報じられている。この作品は日本の将来への懸念を示した内容と解釈されている。

現在、韓国政府が国家指定文化財「宝物」に指定している安重根の遺墨は31点に上る。

龍谷大学所蔵の遺墨に関心高まる

龍谷大学が所蔵する「獨立」の遺墨は、韓国側で特に注目されている。同大学はこれまで遺墨の貸与要請に応じてきたが、今後の対応が注目される。ジャーナリストの五味洋治氏は「個人所有の遺墨が多く、政府間交渉は難しいが、民間レベルでの交流が進んでいる」と指摘する。映画化で高まる関心が、新たな遺墨発見や返還の動きを促す可能性もある。

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