アメリカのZ世代の間で社会主義への支持が急速に高まっている。最近の世論調査によると、アメリカの大学生の67%が社会主義を好意的に見ているという(米ニュースサイトAxios調べ)。経済思想家で東京大学准教授の斎藤幸平氏は、この現象を「ある『亡霊』が、アメリカを徘徊している。それは、Z世代の社会主義という亡霊だ」とマルクスになぞらえて表現する。
Z世代の社会主義支持の背景
英『The Economist』誌も「Z世代の社会主義にどう立ち向かうか」と題した特集(6月6日号)を組み、社会主義台頭への懸念を示した。しかし斎藤氏は、同誌の社会主義批判を「カビの生えたような批判」と一蹴する。Z世代の若者たちは、資本主義が引き起こした生活不安に日々苛まれている。「家賃が払えない」「医療費が高すぎる」「子育てができない」「食料品が買えない」「通勤だけで生活が削られる」といった実感が、社会主義を身近なものにしている。
ニューヨーク市長選での歴史的勝利
この変化を象徴するのが、2025年11月のニューヨーク市長選で勝利したゾーラン・マムダニ氏だ。34歳の民主的社会主義者であるマムダニ氏は、元ニューヨーク州知事アンドリュー・クオモ氏や共和党候補を破り、ニューヨーク初のムスリムかつ南アジア系市長となった。投票者数は200万人を超え、市長選としては1969年以来の高投票率を記録した。
斎藤氏はこの勝利を「左派ポピュリズムの一例」として片づけることはできないと強調する。2011年のウォール街占拠運動、バーニー・サンダース旋風、ブラック・ライブズ・マター運動、気候正義運動、そしてガザをめぐる抗議運動を経て、若い世代は自己責任や格差を当然視する政治言語に深い不信を抱くようになった。実際、若者の投票率は過去の市長選と比べて大きく上昇し、特に若い女性や有色人種の若者がマムダニ氏を強く支持した。
社会主義の核心:コモンの再建
若い世代にとって「社会主義」とは、国家がすべてを命令する全体主義ではない。斎藤氏は、生活に不可欠なものを市場の気まぐれや富裕層の投資判断に委ねず、特定企業の独占を許さないという、素朴で切実な日々の要求だと説明する。家に住めること、子どもを安心して預けられること、健康な食べ物を買えること、自由に移動できること——これらを商品ではなく、誰もがアクセスできる「コモン(共有財)」として再建することが、マムダニ氏の言う「社会主義」の核心である。
日本にも突きつけられた問い
斎藤氏は、物価高が生活基盤を脅かす日本も他人事ではないと指摘する。「社会に問うべきなのは、なぜ普通に働いている人が普通に暮らせないのか、だ」と述べ、競争社会から互いに支え合う社会への移行の必要性を訴える。ニューヨークの動きは、日本における「生活費を下げる政治」のヒントとなる可能性がある。



