本や資料を読んでも翌日には忘れてしまう――そんな経験はないだろうか。確実に記憶に残すにはどうすればいいのか。下関市立大学教養教職機構の佐々木淳准教授は「蛍光ペンに頼る人は多いが、マーカーを引くことの意味が誤解されている。覚えるために使うのではなく、忘れるために使うのが正解だ」と指摘する。
「科学的に正しい」に注意すべき理由
近年、「科学的に正しい」勉強法が多く喧伝されている。しかし、科学的な結果のほとんどは「特定の条件下」「特定の対象」に対して得られたものであり、文化や教育背景が異なる日本人にそのまま当てはまるとは限らない。佐々木准教授は自衛隊での教育経験から、有名大学の研究結果がうまく当てはまらなかった事例を挙げる。
また、心理学や教育分野では「再現性の危機」が指摘され、過去の有名研究の多くが再実験で同様の結果を得られていない。データに頼れない場合、自分の「手応え」を信じることになるが、そこには「学習の錯覚」という落とし穴がある。わかりやすい講義を受けると「よく理解できた」と満足するが、その満足が実際の成果と結びつかないことが、ハーバード大学の研究などで示されている。
「蛍光ペンで線を引く」に意味はあるのか
効率的な勉強法を取り入れる人は多いが、正解だけを追い求めると、知らず知らずのうちにNG行為を犯すこともある。記憶容量には限りがあるため、「覚えるべきもの」と「そうではないもの」を分ける必要がある。その際によく使われるのが、蛍光ペンなどで重要な部分をハイライトする方法だ。
しかし近年、ハイライトは「効果がない」「意味がない」と指摘する声もある。本当にそうなのか。もし効果がないなら、なぜ多くの人がハイライトを続けているのか。この疑問を手がかりに、ハイライトの意義を再考しよう。
2013年に発表されたダンロスキー教授らの調査・分析では、ハイライトを単独で用いた場合の効果は低いと指摘されている。この結果を根拠に「ハイライトはダメ」と断言する本も少なくない。しかし、ハイライトの効果を否定する本は、一体どんな方法を使っているのだろうか。
「覚える」には不向き、あくまでも復習のため
佐々木准教授は、ハイライトは「覚えるため」ではなく「忘れるため」に使うべきだと説く。つまり、重要な箇所に印をつけることで、後で復習する際に「どこを覚えるべきか」を素早く把握できるようにするのだ。初読では線を引かず、全体の5%程度に絞ってハイライトすることで、記憶に残すべき情報を明確にできる。
ハイライトすると「記憶から消えやすい」という研究結果もあるが、それはハイライトした部分だけに注意が集中し、他の情報がおろそかになるためだ。適切に使えば、ハイライトは強力な学習ツールとなる。
本稿は、佐々木淳『科学的根拠+αで成果を出す 戦略的勉強法』(あさ出版)の一部を再編集したものだ。



