鉄道モーターの保守会社が異業種に活路を見出す
JR西日本グループの鉄道モーター保守会社が、長年培ってきた直流モーター修繕技術を武器に、異業種への進出を模索している。同社は業界では新参だが、過酷な環境下での技術力が評価されている。
直流モーター修繕技術の価値
同社の絶対的な技術力は、直流モーターの修繕技術にある。国内の鉄道用モーターは直流と交流の2種類に大別される。直流モーターはブラシと整流子という摩耗部品を介して通電し回転する構造で、単純な原理から長年鉄道車両に使用されてきた。特に国鉄時代からの車両で多く採用されている。
直流モーターは原理が単純だが、ブラシと整流子が高速で摩耗するため定期的なメンテナンスが必要。微細なコイルにつながる整流子の製作には高度な技術と手作業が求められる職人技の世界であり、同社はそれを高水準で継承している。この技術は現在では希少で、直流モーター車両を運行する全国の鉄道事業者から同社に修繕依頼が集まっている。
地方鉄道では、首都圏などの大手私鉄の車両を再利用したり、旧型車両を大切に運行し続けたりする事業者が多い。高額な主電動機に不具合が生じた際、新品を購入する余力がない会社もあり、修繕は新品交換より安価なため、同社の技術は重要な役割を果たしている。
富士電機製作所総務企画部の飛岡広大氏は、「新品への取り換えは最後の手段。安全を第一に、既存の直流モーターを修繕して使用いただくことで、コストを抑えつつ車両を長く使えるよう提案している」と語る。
交流モーターへの対応と検査周期の最適化
一方、現在の主流は交流モーターであり、直流モーターに比べて機械構造がシンプルで省エネ性能に優れ、ブラシや整流子の物理的接点がないためメンテナンスも省力化できる。同社も交流モーターの修繕事業を行っており、2024年度の売上高では交流モーター関連が初めて直流モーターを上回った。
また、機器の高寿命化・高性能化に伴い、鉄道車両の検査周期も見直されている。JR西日本では、従来の8年ごとの全般検査や4年ごと(または60万kmごと)の要部検査を、在来線の新世代車両では走行距離による劣化を検査する距離保全(80万kmごと)と、使用期間による劣化を検査する期間保全(10年ごと)に分割し、安全性に配慮しながら機器の性能を活かした検査周期に最適化している。
同社はこれらの技術を基盤に、鉄道業界以外の過酷な環境で使用されるモーターの修繕にも着手し、新たな活路を見出そうとしている。



