「この土地、何か活用できませんか?」という相談は、不動産のプロの下に最も多く寄せられる質問の一つです。しかし、筆者は逆にこう問いかけます。「その土地に、本当に需要はありますか?」。多くの相談者が少し驚いた表情を見せます。不動産活用というと、アパートを建てる、駐車場にする、店舗を誘致するといった方法論から考えがちですが、実際にはどのような活用をするかよりも、その土地に需要があるかどうかの方が重要です。今回は、収益不動産になる土地と、そうならない土地の違いについて考察します。
「土地がある」と「収益が生まれる」は別問題
不動産を相続すると、「せっかく土地があるのだから、何か収益を生む方法を考えたい」と思う方は少なくありません。その気持ちは自然なものです。しかし、土地があることと、収益が生まれることは同じではありません。例えば、駅前の100坪と山間部の100坪では、同じ面積でも価値は大きく異なります。理由は単純で、土地そのものではなく、その場所を使いたい人がいるかどうかによって価値が決まるからです。
不動産の価値は「需要」で決まる
不動産業界ではよく「立地がすべて」と言われます。もちろん間違いではありませんが、より正確に言えば、立地ではなく需要がすべてです。例えば、駅から遠くても、物流施設用地、介護施設用地、太陽光発電用地として需要があるケースもあります。逆に、駅に近くても、人口減少、賃貸需要の低下、商圏縮小などによって収益化が難しい場合もあります。重要なのは、「この土地を必要とする人がいるか」という視点です。
収益不動産になりやすい土地の特徴
一般的に、収益不動産として成立しやすい土地には共通点があります。
- 継続的な需要がある:人口が一定以上いる、世帯数が維持されている、雇用が存在する、人の移動(流出入)が多いといった地域では、賃貸需要も比較的安定しています。
- 利用目的が明確である:住宅地、商業地、医療福祉施設向け、物流施設向けなど、用途が明確な土地ほど活用の可能性は高くなります。
- 競争力がある:近隣に同じような物件が大量にある場合、価格競争に巻き込まれる可能性があります。不動産も市場です。他との差別化が必要になります。
収益化が難しい土地の特徴
一方で、次のような土地は慎重な判断が必要です。
- 人口減少が著しい地域:借り手や利用者そのものが減少しているため、活用方法が限定されます。
- 利用制限が大きい土地:接道条件や市街化調整区域、農地規制などによって、そもそも活用の自由度が低い場合があります。
- 維持費が収益を上回る土地:管理や固定資産税は発生するものの、十分な収益が見込めないケースです。
こうした土地では、残念ながら活用よりも売却や整理の方が合理的なこともあります。重要なのは、「活用しなければならない」という思い込みを手放すことです。不動産は手段であり、目的ではありません。所有し続けるコストと、売却・整理によって得られる流動性を冷静に比較したうえで、最適解を選ぶことが真の資産マネジメントと言えます。
「何を建てるか」より「何が求められているか」
土地活用の相談では、「アパートを建てるべきでしょうか」という質問を受けることがあります。しかし本来考える順番は逆です。まず確認すべきなのは、「この地域では何が求められているのか」です。その結果として、賃貸住宅や駐車場、医療福祉施設、商業施設などの選択肢が見えてきます。活用方法は目的ではなく結果です。
土地を見ずに、市場を見る
収益不動産になる土地と、ならない土地の違いは、土地そのものにあるのではありません。その土地を必要とする人が存在するかどうか、つまり需要があるかどうかにあります。不動産活用で失敗する人は、土地を見ています。成功する人は、市場を見ています。相続不動産を活用するときも、「何を建てるか」から考えるのではなく、「誰が、何のために使うのか」から考えることが大切です。それが、収益不動産として成立するかどうかを見極める第一歩なのです。
筆者が関わるプロジェクトでは、まず市場調査と需要分析を徹底的に行い、その結果を踏まえて活用か売却かを判断します。土地を活かすとは、単に建物を建てることではなく、その資産が社会の中でどのような役割を果たせるか、あるいはどのような用途の不動産が求められているのかを見定めることです。その視点を持つことが、長期にわたる資産価値の最大化につながります。
次回は、「『とりあえずアパート経営』が危険な理由」をテーマに、相続税対策として勧められることの多いアパート経営について、成功例と失敗例を交えながら解説します。
佐嘉田 英樹(さかた ひでき)
アテナ・パートナーズ株式会社 代表取締役。1991年に東京大学卒業後、富士銀行(現・みずほ銀行)入行、主に融資営業・マーケティング戦略企画に携わる。その後不動産・建設業界に身を転じ、建売分譲、賃貸アパート、介護福祉施設等の企画開発・売買などに従事し、2023年8月に独立。地主・不動産投資家・中小企業の不動産活用コンサルティングやプロジェクト・マネジメント、テナント企業の開業支援を行う。宅地建物取引士、不動産コンサルティングマスター、2級建築士、FP2級など幅広い専門知識を駆使し、総合的な視点からクライアントの課題解決にあたる。



