宇宙航空研究開発機構(JAXA)は今年度、火星の衛星を観測し、砂などを地球に持ち帰る世界初の試み「MMX計画」の探査機を打ち上げる予定です。プロジェクトマネージャの川勝康弘さん(58)に、計画の意義や技術的な挑戦について聞きました。
世界初の火星衛星探査
MMXは「Martian Moons eXploration(火星衛星探査)」の略で、火星の衛星フォボスとダイモスの観測に加え、フォボスに着陸して砂や岩石のサンプルを採取し、地球へ持ち帰ります。JAXAのほか、米航空宇宙局(NASA)や欧州宇宙機関(ESA)なども参加しています。
二つの衛星は「太陽系で最も重要な未踏峰」と言われています。フォボスに着陸する理由について、川勝さんは、ダイモスより火星に近く、火星から飛来した物質が多いと考えられることや、黒い色から水や有機物を多く含む天体だと想像されることを挙げました。サンプルを分析できれば、フォボスの起源だけでなく、太陽系や生命の誕生に迫る手がかりが得られる可能性があります。
日本の技術を結集
この壮大な計画を支えるのが、日本の探査技術です。日本は「はやぶさ」「はやぶさ2」で小惑星の物質を地球に届けるサンプルリターンを成功させています。神奈川県相模原市にあるJAXA宇宙科学研究所の宇宙科学探査交流棟には、MMX探査機の縮小模型や「はやぶさ」のサンプルに関する展示があり、日本の宇宙研究を学べます。
MMX探査機には、フォボスへの安全な着陸と確実なサンプル採取のための工夫が施されています。火星とフォボス両方の重力に耐える強い力が必要なため、「はやぶさ2」とは異なるエンジンを採用。より深い場所から多くのサンプルを採るため、カプセルも大型化されました。
5年後の帰還に向けて
川勝さんは子どもの頃から「飛行機を作る人になりたかった」といい、技術面から計画を支えています。自動車が約10万個の部品でできるのに対し、MMX探査機の部品は約100万個に上るそうで、「それらがきちんとつながり、作動させられるかどうかという難しさがある」と語ります。
打ち上げには日本の主力ロケット「H3」が使用される予定で、川勝さんは「H3ができたから、MMX計画が実現できる」と話します。探査機は5年後に地球へ戻る予定です。「MMX計画はうまくいくと思いますか?」との質問に、川勝さんは「うまくいくに決まっているじゃないですか!」と笑顔で答えました。
MMX計画は、火星圏やさまざまな謎について新たな発見をもたらすと期待されます。また、すぐに結果が出なくても挑み続けることの大切さを教えてくれます。



