文学座「かさぶた式部考」松本祐子演出、森寧々が大役に挑む
文学座「かさぶた式部考」松本祐子演出、森寧々が大役に挑む

文学座が、秋元松代の代表作の一つである「かさぶた式部考」を上演する。この作品は、全国各地に伝わる「和泉式部伝説」に着想を得た物語だ。演出を手がける松本祐子と、和泉式部の末裔を名乗る智修尼役を演じる森寧々に、作品への思いを聞いた。

作品の魅力と背景

平安時代の歌人、和泉式部。全身かさぶたにおおわれた彼女が薬師如来によって救済されたという民間伝承を基に、秋元が書き上げた戯曲は、1969年に演劇座で初演され、1990年には「式部物語」のタイトルで映画化もされた。2022年に秋元作「マニラ瑞穂記」を演出した松本にとって、「かさぶた――」は「大好きで、ずっとやりたかった戯曲」だと語る。

松本は「社会から忘れ去られた人たちが正しく怒り、正しく尊厳を守って生きていくことはできないのか、問いかけられる作品だと思った」と述べ、作品の持つ社会的なメッセージ性を強調する。

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物語のあらすじ

舞台は1960年代の九州。炭鉱事故の影響で正気を失った農家の長男、大友豊市(越塚学)は、妻のてるえ(鈴木結里)や母の伊佐(名越志保)の世話を受けながら暮らしている。ある日、豊市は六十八代目和泉式部を名乗る智修尼と出会い、その美しさに心を奪われる。

智修尼はかつて、劇団民芸では奈良岡朋子、映画版では岸恵子によって演じられてきた大役だ。2023年に座員となった森が抜てきされた。文学座の本公演出演は初めてという森は、「私の引き出しにはない役で、配役を聞いたときは震えた」と振り返る。

演出家の視点

松本は森の起用について「森さんは真面目で心に善なるものをたくさん持っている人。心の奥にどす黒いものがある智修尼を、森さんみたいな人が演じる方が面白いと思った」と語る。智修尼は豊市を見下しつつもそばに置く一方、てるえや伊佐は豊市を取り戻そうと奔走する。松本は「強烈な人物ばかりですが、それぞれの事情は理解できなくはない。みんな踏ん張って生きている。そこから勇気が与えられる作品にしたいですよね」と意気込む。

役者としての挑戦

セリフは九州弁を思わせる方言で書かれており、兵庫県出身の森は格闘中だ。「言葉が発する力が強くて、油断するとコロコロと流れていってしまう。いかに自分を落とし込んでいくかが問われている。もう身も心もさらけ出していくしかない」と決意を語る。

文学座の女性演出家たち

近年、五戸真理枝、西本由香、稲葉賀恵、生田みゆきと文学座の女性演出家の活躍が目立つ。その“長女”的存在が松本だ。「助手につく機会も多いですし、アトリエ公演もありますし、演出家が育ちやすい土壌があるからでは」と気負いはない。来年、座員となって30年を迎える。「あと何年できるか、考えるようになった。やり残しがないようにどんどんやっていきたいですね」と語る。

公演は東京・新宿の紀伊国屋ホールで29日~6月6日まで。問い合わせは電話03-3351-7265まで。

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