Mrs. GREEN APPLEはロック?J-POP? 音楽ジャンルの必要性を問う
昨年のMUSIC AWARDS JAPANで主要部門「最優秀アーティスト賞」に輝いたMrs. GREEN APPLE。4月30日に発表された「MUSIC AWARDS JAPAN 2026」のノミネート一覧は、彼らの音楽がロックではないのかという問いを想起させるものだった。63部門の中にはジャンル別の賞もあり、ミセスは「最優秀J―POPアーティスト賞」の候補に選出された。彼らの楽曲はビートの強いバンドサウンドだが、「最優秀ロックバンド/ソロアーティスト賞」の候補には名がない。朝日新聞のデータベースでも、彼らを紹介する言葉は「3人組バンド」「人気バンド」が多く、「ロック」の呼称は避けられている。J―POPが邦楽全体を指す場合もあるが、ここではロックやヒップホップと並ぶ独立した一部門となっている。
音楽ジャンルの本質とは
音楽ジャンルは、突き詰めて考えるほどその実体は捉えがたい。ポピュラー音楽研究者の南田勝也・武蔵大学教授は、マックス・ウェーバーの「理念型」という概念を用いてその本質を説く。理念型とは、現実に起きている事象への理解を手助けするための参考モデルだという。南田教授は語る。「ロックやJ―POPといったジャンルは、世の中のすべての楽曲を漏れなく特定の枠に収めるために存在していません。厳密に当てはめようとすると矛盾や違和感が生じます。ただ、それらの明確な区分が頭の中にあるからこそ、ミュージシャンが新たな音を生み出してきた時に『これはロックとポップスの中間的な音楽だ』などと、その立ち位置を測ることができるわけです。ジャンルとは、音楽の全体像を把握し、新しいサウンドを可視化するための土台なのです」
ジャンル形成のプロセス
作曲家でNPO法人「ミュージック・プランツ」理事長の北田陽一郎さんは、ジャンル成立のプロセスをこう説く。「音楽ジャンルは死につつ生きている」。新しいサウンドを生み出すアーティストが現れ、その音楽が既存のジャンルに当てはまらない場合、新たなジャンルが生まれる。しかし、時間とともにそのジャンルは固定化され、やがて死を迎える。サブスクリプション型音楽配信サービスの普及により、リスナーはジャンルにとらわれずに楽曲を楽しめるようになった。一方で、プレイリストやレコメンド機能は、音楽をカテゴライズすることで成り立っている。ジャンルは不要になりつつあるのか、それとも新たな形で必要とされているのか。
サブスク時代の音楽ジャンル
音楽ストリーミングサービスが主流となった現代、リスナーはジャンルを意識せずに音楽を聴くことができる。しかし、プラットフォーム側は「ロック」「ポップス」「ヒップホップ」などのジャンルタグを付与し、ユーザーに推薦する。ジャンルは依然として音楽の発見や分類に役立っている。Mrs. GREEN APPLEの例に見られるように、アーティストの音楽がどのジャンルに属するかは、賞の部門やメディアの扱いに影響を与える。ジャンルは音楽業界の慣習として残り続けるが、その境界はますます曖昧になっている。
結論
音楽ジャンルは、厳密な分類ではなく、音楽を理解し、新たなサウンドを位置づけるための概念的な道具である。サブスク時代においても、ジャンルは完全に消えることはなく、形を変えながら存続するだろう。Mrs. GREEN APPLEがロックかJ-POPかという問いは、ジャンルの本質を考えるきっかけとなる。



