役所広司&宮藤官九郎が“承認欲求”を告白『俺のこと、なんか言ってた?』インタビュー
役所広司&宮藤官九郎が“承認欲求”を告白

Netflixシリーズ『俺のこと、なんか言ってた?』が10月22日より世界独占配信を開始した。本作は、大物俳優・高瀬川玄(役所広司)が2年ぶりに帰国すると、世間からも家族からも完全に忘れられてしまっていたことから始まるヒューマンコメディー。オリコンニュースでは、主演の役所広司と脚本を手がけた宮藤官九郎にインタビューし、承認欲求の塊である高瀬川を演じた心境や、脚本の魅力、配信後だからこそ明かせる裏話を聞いた。

役所広司が絶賛する脚本のリアリティ

脚本を初めて読んだ際に魅力を感じた点について、役所は「宮藤さんはご自身が脚本家であり演出家であり俳優でもあるから、これまでにたくさんの役者を見てこられているので、『こういう人いるな!』という切り取り方が本当にお上手です。普段から“意地悪な目”で観察されているのではと思うくらい(笑)。それほどリアリティがありました」と語った。

具体的には「スタッフ同士の関係性や、エキストラの方でも『あんな感じで怒られている人を見たことあるな』といった状況を彷彿させるシーンがたくさんあって、読んでいてドキドキしました」と振り返る。

テーマに“承認欲求”を選んだきっかけについて、宮藤は「僕もそうですけど、この仕事は顔や名前を知られていくことが醍醐味でもあり宿命。一方で知られてしまったら忘れられない限り、そのイメージを背負い続けることにもなります。傲慢な考え方かもしれませんが、『誰も自分を知らない状態にリセットされたら俺はどうなるのだろう?』と、表現に関わる人なら一度は考えると思うんです」と説明。「忘れられた人が再び認識されていくことで、物語として想像以上に転がっていくのだと思いました」と続けた。

「このために1話からやってきた」クライマックスの舞台公演

高瀬川玄を演じた役所は、「高瀬川は正直な男。きっと多くの俳優の性根は同じだと思います(笑)。ただ普通は承認欲求を隠しますが、高瀬川はあからさま」とキャラクターを解説。「一番大事にしたのは高瀬川が持つバカ正直さです。たいていの人はエゴやプライドを隠して、いい人として振る舞いますが、高瀬川は隠そうとしているのにバレてしまう。その隠しきれない正直さこそが高瀬川のチャーミングなところだなと」と語った。

特に印象に残っているシーンについては「クライマックスの実際の舞台公演を挟みながら、出演者のリアクションとその間に挟まれるインタビューです。このために1話からやってきたのだなという感じがしました」と明かした。

世間の評価は「気になる」と本音を吐露

世間の評価や自身に関する噂話を気にするかという質問に、宮藤は「気にはなります。検索して『俺のこと誰も何も言ってないな』『俺、出ているのに』って無駄に傷ついたり(笑)」と回答。役所も「しますよ(笑)。映画が公開されたりすると『みんながどう思っているのかな』って気になるので、評判とか見ます」と明かした。

役所は、高評価を見聞きした際の心境について「うれしいけど、(本人の手前)一応褒めてくれているのだろうなとか、思いますね」と語り、感想を言われるとうれしい方向性については「上手いとかではなく(感想を)言ってもらえることがうれしいかな」と述べた。

濵田雅功の第一印象は「怖いしセリフも適当かと(笑)」

共演者について、役所は「みなさん素晴らしい俳優で(演技で)笑わせてくれて、適材適所だなと感じました」と総評。壬生大也役の濵田雅功については「『テレビ界の巨匠みたいな感じで怖いし、セリフなんて適当に言っておけばいいのだろう』と勝手なイメージをしていましたけど(笑)。素敵な演技をされていました」と振り返った。

宮藤は「もっと変えてくるのかなと思ったら、脚本に書いてある順番で言ってくださって。もちろん当たり前のことではありますが、なんとなくやらないのではと思っちゃう(笑)。すごくナチュラルに演じてくださっていたのがうれしかったです」と語った。

一発勝負の小道具ハプニングと撮影秘話

見逃してほしくないシーンについて、宮藤は「忘れられる前の高瀬川が面白いので全部観てほしいし、運転手をしているときの高瀬川も好きですね。腹の中では絶対思っていないだろうに、後部座席のドアを開けて『どうぞ』って恭しくやっている(笑)」とコメント。役所は「やっぱり舞台公演のシーンです。みんなのリアクションが素晴らしくて、チヂミ姉さん(坂井真紀)も大笑いしていました。途中で帰るのに(笑)。すごく良いシーンになったなと思います」と語った。

劇中劇の舞台公演について、宮藤は「劇中劇でやろうと思えばできたし、本当にやっているように見せることもできましたが、結果的には実際に上演して良かったと思います。客席にいるキャストのリアクションも感激している様子をGoProで撮影していて、生のリアクションがある素晴らしいシーンになりました」と説明。

撮影秘話として「岡本が最後、小道具が出ていなくてドンとダンボールを倒してペットボトルを持ってくるシーン。実は(公演ではドラマに使った)あの回しかやっていないので、失敗したら台無しじゃないですか。俺ならやるのはイヤだなって思いましたけど(笑)。バッチリで面白かったです」と明かした。

仕事に臨む上での軸と役所のスタンス

仕事に臨む上での軸について、役所は「演じる前に現場で監督と事前に相談しすぎない、ということですね。先にディスカッションする方もいますけど、事前に『自分はこう考えていて』と話し合ってからやる必要はないと思っています」と語る。「監督の話を聞くと、当然ながらそうしなければいけなくなりますよね? だからこそ何か言われる前に、自分が本を読んで考えた解釈をやった方がいいと考えていますし、後から『こうしてほしい』と言われたら合わせていけばいいと思っています」と続けた。

宮藤は「それは(作り手側にとっても)すごくありがたいかもしれません。確かに『こうしてほしい』『わかりました』となったら、そのとおりにやる必要が出てきますよね」と応じた。

もし自分が知られていない世界になったら?

ある日自分が忘れ去られてしまったらどうするかという質問に、役所は「何でもできる気がしますね」と回答。宮藤は「確かに。誰も自分のことを知らないなら、そのシチュエーションで堪能できることを堪能して、その後にどうするか考えます」と語った。

役所は「顔バレを気にしなくていいのは気持ちが楽ですよね。例えばどこかの職場に行って、わざと芝居が下手なフリをして演じてみたいかな。それで周りがどんなリアクションをするか見てみたい。ただ、大したリアクションが得られなかったらショックを受けるのでしょうけど(笑)」と想像を膨らませた。

宮藤は「今でもたまにラジオに投稿するんですけど、もしかしたらそれも超承認欲求なのかもしれないです(笑)」と冗談めかして話した。