朝日新聞が報じた「テレビ離れの加速」に関する記事が話題を呼んでいる。しかし、その内容にはミスリードと言える点が複数存在するようだ。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志氏が、その問題点を指摘する。
テレビ離れ報道の背景
記事では「20代の7割がテレビを見ない」というデータが強調されているが、この数字は特定の調査方法や時間帯に基づいており、全体像を正確に反映していない可能性がある。実際には、リアルタイム視聴だけでなく、録画や配信サービスを通じてテレビ番組を視聴する若者は少なくない。
制作現場の問題点
木村氏は、テレビ業界が抱える根本的な問題として、以下の点を挙げる。
- 質の低下:視聴率重視の制作により、番組の質が低下している。
- 横並びの編成:各局が似たような番組を放送し、差別化ができていない。
- 報道姿勢:偏向報道やセンセーショナリズムが視聴者の信頼を損ねている。
作り手と出演者のテレビ離れ
視聴者だけでなく、作り手や出演者の間でもテレビ離れが進行している。組織のガバナンスや自由度、報酬や勤務形態などの待遇に不満を持つスタッフが、テレビの現場を離れるケースが増えている。また、コンプライアンス対応や表現の幅に制約を感じる声も多い。
制作力の高さとビジネスモデルの矛盾
テレビ局の制作力は依然として国内トップクラスであり、NetflixやAmazon Prime Videoなどの配信プラットフォーム向けにドラマやバラエティを制作するケースが増えている。例えば、2023年3月にNetflixで独占配信されたWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の中継は、日本テレビが制作を担当した。
しかし、各局は自局のコンテンツを世界配信して収益を得るという今後のビジネスモデルにシフトしたいと考えているものの、視聴率前提の従来のビジネスモデルが足かせとなっている。「今、視聴率が取れそうな番組」というマーケティングでは、似たような構成・演出に偏り、結果として「どれも同じ」「つまらなくなった」という批判を招いている。
配信とリアルタイム視聴のジレンマ
各局は「配信で見たいときにじっくり見てほしい」「実はNetflixのこの番組も手がけています」といったアピールを十分に行えていない。その理由は、自局の番組をリアルタイムで視聴してもらわなければビジネスが成り立たないからだ。この状態は、作り手や出演者にとって不健全であり、結果的にテレビ離れを加速させる遠因となっている。
メディアリテラシーの重要性
私たち視聴者に求められているのは、ネット記事の本質を見極める目を持つことだ。今回のようなミスリードに流されるのではなく、「やっぱりテレビはすべてダメ」と決めつけるのではなく、フラットな視点で情報を収集し、批判的に評価する姿勢が重要である。



