TBS系ドラマ『Tシャツが乾くまで』(毎週金曜22:00~)の土井裕泰監督が、作品の魅力や演出への思いを語った。
本作は、脚本家・生方美久による完全オリジナルストーリー。とある事故がきっかけで、当たり前に続いていくと思っていた幸せな日常が、突如崩れ去ってしまった二組の夫婦の喪失から始まる“愛”と“秘密”を描く。
「試されている」と感じた生方美久の脚本
『カルテット』(2017年)、映画「花束みたいな恋をした」(2021年)、「九条の大罪」(2026年・Netflixシリーズ)など、数々のヒット作を手がけてきた土井監督。今回初めてタッグを組む生方美久の脚本について、「まず会話が生き生きとしていること。そして人間たちが多面的で、予定調和ではない、知らないうちに意外なところへ連れて行かれてゆくような面白さを感じました」と語る。
「“今の人の話す言葉”がしっかりあって、なおかつ、独特の文体といいますか、レトリックがちゃんとある。言葉の力が強い分、映像になったとき、どうリアリティを持たせられるのか、その難しさも感じました」と振り返る。
セリフのないシーンへのこだわり
基本的に会話劇である本作では、登場人物たちがどんな場所で、どういう距離感で会話するのか、まずはその環境を考えて俳優やスタッフに提示することが演出の仕事だと考えたという。コインランドリーはこのドラマにとって重要な場所であり、「かなりたくさんの物件を見て決めさせてもらいました」と明かす。
また、セリフのない場面、余白をどのように見せていくのかも非常に意識した部分だと語る。第1話で、蒼井優さん演じる咲子が被害者の説明会から抜け出して、1人で事故現場に行くシーンは、台本上はほとんどト書きだけのセリフのないシーンで、「そういったシーンをどのように表現するかは、毎回自分の課題にしていました」と話す。
蒼井優の芝居との出会い
撮影現場ではキャストとよくディスカッションしているという土井監督。「生方さんの脚本で描かれる人間たちは、受け取る側の生活環境や育ち方などによって、捉え方が変わってくるんですよね。なので自然と俳優さんたちと現場でディスカッションすることは多くなりましたね」と説明する。
印象的だった撮影エピソードとして、「やはり蒼井優さんの芝居に出会えたことですね。嬉しいとか悲しいとか、そういう単純ではない、“名前のつけようのない感情”が本当にリアルに表現されていて、悲しいのに笑ってしまう、冷静なはずなのにどうしようもなく涙がこぼれてしまう…。そんな生身の人間の複雑さや面白さを蒼井さんの芝居を通して見るたびに、ただ見入ってしまうというか、「すごい」と思わず言葉を漏らしてしまうときが何度かありました」と明かす。
中島歩さん演じる園田樹生は、冒頭から複雑な悩みを抱えた役で、特に第1話は演じる中島さんは大変だったと振り返る。「彼は、わりと論理的に役を捉えて作っていくタイプの俳優さんだと思うのですが、演じる樹生という人物がすでに混乱の中にいて破綻しかかっているんだから(笑)。なので、蒼井さんも交えてたくさんディスカッションしましたね」と語る。
劇伴音楽と終盤の見どころ
劇伴音楽を担当するharuka nakamuraさんは監督からのオファーだった。劇場アニメ「ルックバック」(2024年)と映画「この夏の星を見る」(2025年)を観て、「その音楽が強く印象に残っていたんです。エモーショナルになっても決して暑苦しくない、風通しの良さみたいなものがあって、それがこのドラマの世界観や目指す温度に合っているのではないか。そんな直感が働いて、オファーさせていただきました」と経緯を説明する。
今後の見どころについて、「今まで少しずつヒントが出てきてはいるのですが、第9話では、充(松山ケンイチ)と出会う前の咲子はどのような女性だったのか、未だ語られていない咲子のいろいろな面が見えてきます。もしかしたら放送後、喧々諤々の議論になるかもしれません(笑)。これまで同様、最後まで自分なりの視点で観て、楽しんで、考えて、語り合っていただけたらと思います」とメッセージを送った。
第9話では、充の前から姿を消した咲子が、とある海辺の街で暮らす篤彦と、その子どもたちと思われる兄妹のもとを訪れる。一方、喫茶「ひこうき」に集まっていた充、直人(高橋文哉)、千鶴(臼田あさ美)、宮内(リリー・フランキー)は、咲子の人物像や行き先について議論。千鶴が語った「飽き性で新しい物好き、切り替えが早い」という、充と出会う前の咲子像が、自分の知る咲子とあまりにも違うことが気に掛かる充。そしてついに、咲子が抱えていた大きな“秘密”が明かされる。



