新国立劇場「イタリアのトルコ人」、歌・音楽・芝居すべて秀逸な極上エンタメ
新国立劇場「イタリアのトルコ人」、歌・音楽・芝居すべて秀逸

新国立劇場が今シーズン開幕に上演したロッシーニの歌劇「イタリアのトルコ人」(新制作)は、歌よし、音楽よし、芝居よし。これぞ極上のエンターテインメントだ。

物語と演出

物語は夫に飽きた人妻ドンナ・フィオリッラとトルコの王子セリムのひとときの恋をめぐる騒動。ロラン・ペリーの演出が楽しい。彼はこのラブコメディを、レトロでポップな写真漫画仕立てにした。歌手は吹き出しつきのコマに収まったり表に飛び出したり。娯楽本ばかり読み耽っている怠惰な若妻フィオリッラの現実と妄想が交錯する仕掛けだ。

歌手たちの魅力

歌手に目をやると、極めて高度な歌唱技術と芝居心をあわせ持つ人がずらり。多角関係のもつれを自作のネタに目論む詩人(ブルーノ・タッディア)や、王子の元恋人ザイダ(但馬由香)も気になる存在だったが、セリム役アレハンドロ・バリニャス・ビエイテスからは目が離せない。堂々たる体躯で大砲のような声を出すのに身のこなしが機敏。ドン・ジェローニオ(パオロ・ボルドーニャ)とマウントを取りあう二重唱「トルコには不要な妻を売る習慣が」では、座面の小さなスツールの上で見事に歌ってのける。

フィオリッラ役クラウディア・ムスキオは、コケットな仕草も魅力的だが、なによりニュアンス豊かなコントロール自在の声が素晴らしい。大詰めのアリア「苦悩と悔恨の惨めな服」では装飾の一音一音にまで涙が滲むよう。しっとりとした真摯な声色と相まって役の本質が見えてきた。

管弦楽の活躍

舞台下の立役者、管弦楽にも拍手を。新国立劇場初登場の若手指揮者アレッサンドロ・ボナート率いる東京フィルハーモニー交響楽団は、洗練されたサウンドで疾走感も抜群。舞台を焚きつける巧さにしびれた。

(音楽評論家・松平あかね)

――7日、東京・初台、新国立劇場。