横浜流星が「この物語を生きたい」と熱望した映画『汝、星のごとく』の魅力を原作と続編から徹底解説
横浜流星が熱望した映画『汝、星のごとく』の魅力を原作と続編から解説

「月に一度、わたしの夫は恋人に会いに行く」。この不穏な書き出しで始まるのが、横浜流星と広瀬すずのW主演で映画化された凪良ゆうの恋愛小説『汝、星のごとく』(講談社)だ。オリコンBiZトークでは、本屋大賞受賞作の魅力やオリコンのランキングデータから見える反響の大きさ、著者の経歴、そしてスピンオフ作品までを紹介した。

横浜流星が原作者に熱意を伝え映画化が実現

『汝、星のごとく』は2023年に第20回本屋大賞を受賞した凪良の恋愛小説。映画で主人公の青野櫂を演じる横浜は、原作を読んで「この物語を生きたい」と切望し、原作者の凪良に直接熱い思いを伝えて映画化が実現した。監督は横浜と7度目のタッグとなる藤井道人で、24年公開の映画『正体』では日本アカデミー賞の優秀主演男優賞と優秀監督賞を受賞している。脚本は連続テレビ小説などで知られる安達奈緒子が担当。もう1人の主人公・井上暁海を演じる広瀬も、過去に凪良原作の映画で全身全霊の芝居を見せており、適役との声も上がっている。

瀬戸内の島を舞台にした15年にわたる恋の物語

物語の舞台は風光明媚な瀬戸内の島。島で育った暁海と、母親の恋愛に振り回されて転校してきた櫂という、家庭に恵まれず孤独を抱える2人が互いに唯一の心の支えとなり、恋に落ちる。やがて漫画原作者の夢を掴むために上京する櫂と、家族のために島で働く暁海の間には、無情にもすれ違いが生じていく。15年にわたる時間の末に2人が下した決断を描く、王道かつ直球のラブストーリーだ。

一見するとよくある設定に思えるかもしれないが、読めば読むほど登場人物の行動から目が離せなくなり、中盤の暁海が覚醒する場面以降はページをめくる手が止まらなくなる引力がある。プロローグとエピローグの仕掛けも秀逸で、「月に一度、わたしの夫は恋人に会いに行く」という不穏な始まり方をする文章が、エピローグで全く同じように登場するが、読み手にまったく異なる意味をもたらす。

オリコンデータが示す反響とスピンオフ『星を編む』

本作への読者の熱気はオリコンのデータからも明確だ。22年8月の単行本発売時、同年8月15日付の初登場ランキングでは19位だったが、23年4月12日の本屋大賞受賞直後の4月24日付週間文庫本ランキングで一気に2位へ急浮上。25年7月の映画化発表と文庫本発売時には7月28日付ランキングで初登場2位を記録し、映画公開後の10月26日付週間では1位に浮上。発売から1年3ヵ月を経て初の首位を獲得し、累積売上53.9万部を突破した。

本作の魅力をさらに深めるのが、スピンオフ作品『星を編む』(講談社)だ。中編3本が収録され、本編の主人公たちを導いた恩師の過去、櫂の才能を見出して伴走した編集者たちの情熱、そして暁海の人生をかけた恋愛の結末を描く完結編が収められている。本編を読んでからスピンオフを読むことで、登場人物一人ひとりの背景や人間関係の構成がより立体的に浮かび上がり、物語全体がすっきりと落ち着く構造だ。

著者の凪良は滋賀県生まれで京都市在住。06年に雑誌に作品が掲載され、07年に本格的に作家デビューした。35歳でのデビューで、それまでは専業主婦をしていた時期もある。当初はBL作品を数多く発表し、アジアを中心に大ヒットを記録。17年のデビュー10周年を機に一般文芸にも活躍の場を広げた。20年に『流浪の月』(東京創元社)で本屋大賞を受賞し、23年に『汝、星のごとく』で2度目の本屋大賞に輝いた。本屋大賞を2度受賞したのは恩田陸と凪良の2人だけという快挙だ。

『汝、星のごとく』は登場人物たちが人生をかけた大恋愛の物語である。ピュアな恋愛小説を読みたい人はもちろん、忘れられない人がいる人や一歩踏み出せない人にも深く刺さる内容で、周囲の人を大切にする気持ちや人間関係の向き合い方を考え直させられる普遍的な力を持っている。スピンオフの『星を編む』も含めて、多くの人に手に取ってほしい珠玉の1冊だ。