音楽評論家のスージー鈴木氏は、令和の音楽シーンを牽引するアーティストとして、星野源、米津玄師、藤井風、Vaundyの4人を挙げる。特に1997年生まれのVaundyについては、「AIにとっての最後の敵」と評し、その才能を絶賛している。
星野源の「趣味のよさ」がもたらした革命
4人の中で最年長は1981年生まれの星野源。スージー鈴木氏は、彼が2015年に発表したアルバム『YELLOW DANCER』に注目する。この年は「サブスク元年」とも呼ばれ、新しい音楽メディア環境を引き連れて星野源が登場したと指摘する。
『YELLOW DANCER』を聴いて驚いたのは「趣味のよさ」だったと鈴木氏は語る。過去の邦楽洋楽の名曲を意識的に聴き、独自にアレンジして紡ぎ出した洗練された知的で趣味のいい音。このアルバムがもたらした革命を「趣味のよさ革命」と表現する。
その音世界から、鈴木氏は90年代半ばの「渋谷系」を連想した。ピチカート・ファイヴやORIGINAL LOVE、小沢健二らが追求した、過去の洋楽へのリスペクトに満ちたマニアックで「趣味のいい」サウンドのムーブメントだ。しかし星野源は、その「趣味のよさ」が大衆に開かれた点で渋谷系を超越しているという。
さらに『YELLOW DANCER』から直接想起したアルバムとして、小沢健二の『LIFE』(94年)を挙げる。両者の「開かれ度合い」は張り合うもので、『LIFE』の1曲目『愛し愛されて生きるのさ』と『YELLOW DANCER』の1曲目『時よ』は等価で同義だったと述べる。
米津玄師の強烈な陰鬱性と藤井風の衝撃
続いて鈴木氏は、米津玄師の強烈な陰鬱性を指摘する。その独自性を「突然変異種にして特定外来種」と表現し、既存の音楽シーンとは一線を画す存在だと評する。
また、お茶の間の度肝を抜いた藤井風については、「上手いというより『強い』と感じた」と語る。その存在感と音楽性が、従来のアーティストとは異なる強さを持っているという。
VaundyはAIにとっての「最後の敵」
そしてVaundyについて、鈴木氏は「AIにとっての『最後の敵』」と絶賛する。Vaundyは「ロックってダサい」という風潮を覆したアーティストであり、その楽曲『怪獣の花唄』にはロック感があると分析する。
Vaundyは「恐るべき子供たち」と評され、「売れるかどうか」よりも優先したいことを追求し、「机上で作られた音楽」を超えていく存在だと鈴木氏は見る。その創造性は、AIには模倣できない人間ならではのものだという。
この記事は、スージー鈴木氏の著書『ライバルたちのJポップ史 ~70年代フォークから令和ヒットの裏側で』(祥伝社)からの抜粋である。



