出雲市出身の声楽家、青山恵子さん(75)が、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の怪談や民話を題材にした日本語のオペラ公演に取り組んでいる。6月には、県出身の声楽家らとともに、松江市で演奏会「小泉八雲の世界」を開催。クラシック音楽で生まれ変わらせた物語の世界に観客を引き込んだ。
「耳なし芳一」の迫力ある歌唱
6月21日、松江市西津田のプラバホールで行われた公演。琵琶やチェンバロ、オーボエ、チェロの演奏に合わせ、青山さんが八雲の怪談「耳なし芳一」を題材にしたオペラを披露すると、迫力ある歌唱に観客は圧倒された。同じく出雲市出身の声楽家、田中俊太郎さん(41)も、平家一門の亡霊である武士役で出演。その歌声は武士としての力強さと霊としての不気味さを感じさせた。
来場した雲南市の高校1年、上月恵美さん(15)は、日本語のオペラを聴くのは初めてで、「日本語だと内容がスムーズにわかって、より作品に没入できた」と話した。
八雲作品のオペラ化への思い
青山さんは約15年前、自身の声楽セミナーの支援者で、八雲の愛好家らでつくる「富山八雲会」のメンバーから、八雲の蔵書を受け継いだ富山大の「ヘルン文庫」の存在を聞いた。以前から、歌手一人による「モノオペラ」で八雲の作品を歌ってみたいと思っていた青山さんは「雪女」をオペラ化し、松江を皮切りに富山や東京で公演。その後も八雲の作品のオペラ化に取り組んできた。
青山さんによると、日本では、日本語で公演されることが多いミュージカルの方が親しまれており、主に外国語で歌うオペラはハードルが高いと思われがちという。より多くの人にクラシック音楽に親しんでもらいたいと思う中、子どもから大人までストーリーを理解しやすく、日本の感性を色濃く反映した八雲の作品は日本版オペラに適していると説明する。
青山さんは、島根で公演することへの思いは強い。「地元の人は当たり前だと思っているカエルや鳥の声、お寺で駆け回る子どもたちといった日常的な風景が、私の感性に生きている。歌に導いてくれた先生方や、自分の感性を育ててくれたふるさとに、少しでも恩返ししていきたい」



