僧侶や葬儀会社社員らがメンバーのバンド「THE南無ズ」の人気が急上昇している。ライブは「法事」、チケットは「お布施」、ファンは「檀家」と呼び、お寺の仏前などで説法や笑いを交えてにぎやかにパフォーマンスするスタイルは、「仏教エンタメ」という新たな世界を開拓中だ。
キャンパスで熱狂のライブ
9日、キャンパスで夏祭り中の駒澤大学講堂(東京)で開催された「南無ズ」のライブコンサート。「てら、てら、てらあ!」と、ボーカル兼MC担当の彼岸田盆(ひがんだ・ぼん)さんが絶叫すると、会場の「檀家」たちは楽曲に合わせてこぶしを振り上げ熱狂する。時には、ステージ上で彼岸田さんが香炉を掲げて、「チーン」とお鈴の音が響く中、会場一同での合掌もある。
彼岸田さんは曹洞宗の現役僧侶で、実家の寺(愛媛県)では副住職を担う。16日には「関内ホール」(横浜市)で「THE HOUJI 横浜ベイブリッジを閉鎖せよ!~」と題したライブを開催するが、過去最大の会場(1000人収容)で、公演チケットは完売状態だ。
全国の寺院や老人ホームからもオファー
全国各地の寺院のほか、老人ホームからもライブ開催の声が相次いでかかる。「老人ホームに行った際には『お迎えに来ました』とあいさつすると大爆笑になります」(彼岸田さん)。推し活する「檀家」もうなぎ上りに増えている。
「THE南無ズ」は2018年に結成された。僧侶となり上京していた彼岸田さんは、作曲・作詞とギターを担当する涅槃崎悟(ねはんざき・さとる)さんとお笑いコンビを以前から組んでおり、バンド活動とお笑いを両立している。涅槃崎さんは葬儀会社に籍を置いていて、2人に虚無僧のいで立ちでベースを担当する虚無弦僧四(こむげん・そうし)さんが合流した。
アルバムも好調、仏教のメッセージを込めて
今年4月には2枚目のアルバム『世帯に一つだけの墓』をリリース。売れ行きは上々だという。1枚目のアルバムのタイトルは「ナム・ストーリーは仏前に」だった。いずれのタイトルにもヒット曲への尊敬の念を込めたという。
彼岸田さんがお鈴を鳴らすこともある。「仏教の教えを、やさしく、楽しく多くの人々に伝えることができればと考えています」と語る涅槃崎さんは楽曲に必ず、仏教のメッセージを加味している。特に徳を積める一押しソングは『1/108の煩悩の感情』だという。派手なパフォーマンスをするベースの虚無弦さんだが、メッセージは静かに「檀家」たちに浸透しているようだ。
ライブを見た中学生は、高校進学後に僧侶の道を志して得度したという。先日、彼岸田さんは、曹洞宗の大本山である永平寺の高僧に面会する機会を得た際に、恐る恐る「ご迷惑をかけないようにやっております」とあいさつすると、高僧は「怒られるぐらいがいいんだよ」とありがたいお言葉を授けてくれたという。
「必ず笑顔で帰れます」
「南無ズ」の3人からは「ライブに来ると強制的に必ず笑います。心が疲れているときとか、今ちょっとしんどいと思っている人は、1回まずライブに来てください。必ず笑顔で帰れます」とのメッセージをいただいた。いつの日か、国宝級の名刹(めいさつ)でライブを開催するのが夢だという。



