「男性はみんな好きだった」と言われた元祖・癒し系女優の飯島直子さんが、今や女性から逆転の支持を集めている。その背景には「脅威解除」という不思議な心理現象があると、見た目戦略研究家の宮本文幸氏(桜美林大学ビジネスマネジメント学群教授)は指摘する。
男性人気から女性支持へ
飯島直子さんといえば、かつては男性人気を象徴するタレントだった。しかし現在、SNSやメディアでは女性からの熱視線が目立つ。この変化は、単なる「素顔がきれい」という表面的な話ではない。人が他人の“見た目”にどこに反応し、なぜ好意や警戒心を抱くのかという無意識の心理メカニズムを映し出している。
宮本教授は、天海祐希さんの例を引き合いに出す。天海さんは「女性でありながら理想の男性を演じる」ことで女性ファンを魅了してきた。これを男性に置き換えると、「男性でありながら理想の女性を演じる」歌舞伎の女形に近くなるが、男性ファンが女形に同じ熱量で憧れるケースは宝塚ほど一般的ではない。つまり、同性への憧れ・脅威の感じ方そのものが、性によって違う土俵の上で動いているのだ。
加齢が信頼を高める逆転現象
飯島直子への支持の広がりは、加齢そのものが必ずしも「信頼を失わせる」方向に働くわけではないことを示している。顔の第一印象研究で知られるトドロフらの流れを汲む研究では、顔の成熟度(幼さの逆)が高いほど、有能さや信頼性の評価が高まる傾向があることが示されている。
しわや白髪といった加齢のサインは、見方によっては「幼さの後退=成熟のシグナル」として、むしろ信頼性の評価を押し上げうる。飯島さんの“隠さない老い”が、単に「勇気ある告白」として消費されるのではなく、静かな信頼の土台を作っている可能性がある。
「脅威解除」がもたらす女性からの支持
男性にとっての憧れの対象だった飯島直子が、加齢とともに「脅威」ではなくなることで、女性からの警戒心が解け、親しみやすさが増したと考えられる。この「脅威解除」現象は、同性間の競争意識が薄れることで生まれる。
人の温かさ・親しみやすさの印象は、地位や実績ではなく、表情そのものから強く伝わることが知られている。とりわけ、目元にしわが寄るような心からの笑顔は、年齢や知名度に関係なく「感じがいい人」という印象を与える。飯島さんの笑顔は、まさにその好例だ。
日常に応用できる「衰え」の活かし方
これは芸能人に限った話ではない。飯島さんのように男性ウケから女性ウケに転身するのは極端な例かもしれないが、「衰えを見せることで、自分の魅力そのものを底上げする」という部分は、日常の中でも応用できる。
老いへの向き合い方は、見た目の印象だけにとどまらない。加齢による変化を隠さず、自然体でいることが、かえって周囲からの信頼や親しみを獲得するきっかけになる。飯島直子さんのケースは、見た目戦略の新たな可能性を示している。



