2026年7月15日、第170回直木賞に朝倉かすみさんの「けんぐゎい」(文藝春秋)が選ばれた。東京都内で開かれた受賞会見で、朝倉さんは「老婆作家になりたいとずっと思っていた」と語り、今後の創作意欲を示した。一問一答は以下の通り。
「パワーや伸びやかさ」への感謝
――選考委員から「パワーや伸びやかさを感じた」との講評がありました。
「まだどういうふうに読んでいただけたか詳しく聞いていないので、想像でしかないですけれど、ほめてもらえたらうれしいです。直木賞を授けてくださったことに深く感謝します」
――「思い切り書くのは怖い」と以前おっしゃっていました。
「時代小説を書いたのが初めてで、慣れないことばかりでした。夢中で毎回書いていた感じで、こんなに好きなように書いて候補にしてもらえたことがまずすごくうれしかったです」
「圏外」の主人公に共感
――今作では社会で「圏外」にいる主人公たちが力強く生きる姿を描きました。朝倉さん自身も似た思いを抱えたことはありますか。
「あそこまで劇的ではないですが、短大を卒業するまでは多数派の中にいました。でも就職しなかったんですね。働きたくなかったからです。その時、急に少数派になった感じがして、それからだんだん少ない方についてしまいました。クレジットカードを作れないなど、共通点はあるかもしれません」
号泣の候補発表、受賞は冷静
――好きなように書いた作品が候補になり、受賞に至った気持ちは。
「候補になったときが本当にうれしくて、号泣しました。ただ泣くんじゃなく、結構な号泣レベルで。ピーク感がすごくて、もうここがピークだという感情の高ぶりがあったので、その後はほとんど動揺しませんでした」
――受賞の知らせは落ち着いて受け止めましたか。
「携帯電話を出していたのですが、なぜか私の電話には連絡が来なくて、担当編集者に『朝倉さんの電話がつながらない』と来ました。それで『わーっ』と言ってから、ドキドキし始めています」
初の時代小説、夢中で執筆
――初めての時代小説に挑んだことがパワーや勢いにつながったのでしょうか。
「そうですね。現代小説のように書けないところがあり、勉強不足もあって細かいところが書けませんでした。じゃあどうすればいいんだろうと、ますます夢中になって書きました」
――次にやってみたいことはありますか。
「『けんぐゎい』の最後に出てくる双子の話を書くつもりでした。一人は商家に、一人は新しいコミュニティーで育った子にしたくて、そのコミュニティーがなぜできたのかという話を先に書こうとしたら、長くなってしまいました。まず双子の話を書きたいです」
時代小説の枠を越えた新しさ
――選考委員からは時代小説の枠を越えた新しい形との評価がありました。
「時代小説は、書けばそういう枠に入るのかもしれませんが、私は特に意識していません。ただ、読者の方に新しいと感じてもらえたなら、それ以上にうれしいことはありません」



