ETV特集「ミャンマー学生部隊」がATP賞グランプリ、監督が平和への思い語る
ミャンマー学生部隊ドキュメンタリーがATP賞グランプリ

3月28日にNHK Eテレで放送された『ETV特集 こうして僕らは戦士になった ~ミャンマー“学生部隊”の素顔~』が、「第42回ATP賞テレビグランプリ」でドキュメンタリー部門最優秀賞とグランプリをダブル受賞した。14日、都内ホテルで開催された受賞式で、ten-ten Film & Mediaの米本直樹プロデューサーとトゥラ ウィン監督が喜びと作品への思いを語った。

命がけの決断で撮影された学生たちの闘い

同作は、2021年の国軍クーデター後、民主主義を求めた学生たちが武器を手に取り、ミャンマーの密林で戦う姿を追った59分のドキュメンタリー。日本で育ったミャンマー人のトゥラ ウィン監督が、警察に銃撃され、投獄されながらも撮り続けた武装学生たちの密着映像で構成されている。

米本プロデューサーは、トゥラ ウィン監督から最初に企画を聞いた当時を回顧。その時点では2021年のクーデター時に撮影された映像しかなかったが、「学生だった若者たちがジャングルで軍隊を組織して国軍と戦っているという、にわかには信じられないような話でした」と振り返る。

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この企画はATPが運営する国際共同制作支援の場「Tokyo Docs」に応募され、獲得した100万円の開発資金をもとに再びミャンマーへ向かうことに。一度現地で拘束されていたトゥラ ウィン監督にとっては「命がけの決断だった」という。

心に刺さったリーダーの言葉

米本プロデューサーは、学生部隊のリーダー・オッカーに日本人へのメッセージを求めた際の言葉を紹介。「常に政府を監視してください。政府は初めはいいことばかり言いますが、少しずつ誤った方向へ行くことがあります」と語ったという。米本氏は「これが僕には一番心に刺さった言葉で、今も胸に刻まれています」と明かした。

また、危険な現地取材に臨んだ監督とカメラマンに敬意を示し、「学生部隊を結成したオッカーら、隊員の若者たちにこの賞をささげたいです」と述べた。

そして、ATP加盟社の作り手らによる投票で決まる最高賞のグランプリにも選出され、再び登壇した米本プロデューサーは「こういうドキュメンタリーをやっていると、賞を頂くことは結構複雑な気持ちがあります」と率直な心境を吐露。それでも、「誰かが伝えることに意義があると信じて、ありがたくこの賞を頂きたいです」と受賞を受け止めた。

監督が語った作品制作の決意

トゥラ ウィン監督は、この作品について「最初に撮り始めた時に思い描いていたストーリーにはなっていません」と説明。取材対象となった若者たちから「記録してくれてありがとう」「撮ってくれてありがとう」と言われ、向き合う中で自身も多くのことを知ったという。

「僕は彼らを知りながら、知らないふりをして暮らし続けていくことは難しいと思い、この作品を作ることを決意しました」と語る一方、当初は作品をどのように世に出せばいいのか分からなかった。プロデューサーらスタッフから「トゥラ ウィンのやりたいように作ってみよう」と背中を押され、完成にこぎ着けたそうだ。

トゥラ ウィン監督は作品を通して伝えたいこととして、日本の平和と自由にも言及。「先輩方が作ってくださった日本の平和と自由を、引き続き守ってほしい」と訴えた。さらに、「彼らのことを見てくださった方には、ミャンマーのことも忘れないでほしい」と呼びかけ、「この賞は僕らが制作しましたけれども、自由のために戦う彼らへの賞だと思って受け止めます」とスピーチを締めくくった。

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両親への感謝と再放送情報

トゥラ ウィン監督は、幼少期に来日した当時、日本語が分からない中で、休日には朝から晩までテレビを見ていたと告白。「教育テレビ、バラエティ、ドラマと1日中テレビを見て、日本語を学びました」と振り返り、日本へ連れてきてくれた両親と、番組を作ってきた制作者たちに感謝した。

会場にはそんな両親も来場。日本へ来てから41年になるという父親は、監督が努力を重ねてきたことに触れ、「その成果を今日は皆さんの前に見せてくれました」と喜びを語った。

この番組は、18日(23:00~)に再放送される。