「読み出したら止まらない」雨穴と背筋が牽引するモキュメンタリーホラーとは?【オリコンBiZトーク】
雨穴と背筋が牽引するモキュメンタリーホラーとは?【オリコンBiZトーク】

近年、ホラー小説の業界で大きな話題を集めているジャンル「モキュメンタリー」。ドキュメンタリーのように見せかけたフィクションで、映像の世界では1999年の映画『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』や2007年の『パラノーマル・アクティビティ』などで知られる手法だ。文芸の世界でもここ数年、このジャンルが盛り上がりを見せている。

『変な家』が切り開いたモキュメンタリーブーム

文芸における代表作は、雨穴の『変な家』(飛鳥新社)だ。元々は何千万回も再生されたYouTubeの動画が発端で、その続きを後日談として書籍化した。ライターの主人公が、引っ越しを悩む友人の家の間取り図を設計士に見せたことから始まり、不自然な点から隠された謎を推理していく構成。対話と独白が中心で、読者自身が会話に入り込んでいくような感覚を味わえる。

書籍版には間取り図などの画像が多数挿入され、読者は自分で推理しながら読み進められる。オリコンBOOKランキングでは21年9月6日付で最高3位を記録し、累計119万部以上を売り上げた。文庫版は1位を獲得し累計74万部以上、続編『変な家2』も23年12月25日付で1位となり累計86万部を突破。24年度の年間ランキングでは史上初のBOOKと文庫の2冠を達成した。

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『近畿地方のある場所について』の断片的な情報が生む恐怖

背筋の『近畿地方のある場所について』(KADOKAWA)は、怪談系オフ会で知り合った大学生の小沢が出版社に入り、ライターの背筋に特集企画を持ちかけるところから始まる。しかし小沢は行方不明になっており、情報提供を呼びかける形で物語が展開する。

特徴は情報が断片的に提示される点だ。アダルトサイトの書き込みやオカルト系雑誌への投稿、林間学校での集団ヒステリー事件など、一見無関係な短い話が収められ、次第に繋がっていく。近畿地方のある場所にまつわる「山へ誘うもの」「赤い女」「男の子」という3つの怪異が浮かび上がる構成だ。オーディブル版では声優の演技により、活字とは違う恐怖を体験できる。25年8月25日付のBOOKランキングで4位、累計43万部を売り上げている。

紙の本ならではの仕掛けも話題に

背筋の『口に関するアンケート』(ポプラ社)は、書籍ならではの特別な仕掛けが施されている。通常は黒く印刷される文字が、途中で薄くなったり明るくなったりと変化する。最初は印刷の不具合かと思わせるが、この仕掛けには重要な意味が隠されており、最後まで読んで初めて不気味さに気づき、もう一度読み直したくなる構成だ。

間取り図や断片的な記事、証言、掲示板の書き込みなどを駆使し、読者を物語の当事者に仕立て上げるモキュメンタリーホラー。視覚的な工夫やメディアミックス展開を伴うこれらの作品は、これまでのホラー小説とは一線を画す新たな読書体験を提供している。

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