大分市の大分県立美術館で、前衛芸術を愛した日本人コレクターの収集作品を紹介する展覧会「ラブ!ヴァンガード!!」が開催されている。コレクターの頭文字から「Wコレクション」と呼ばれる作品群は、革新性に富んだ約130点で構成される。
コレクションの始まりとヘイターの足跡
コレクターは1970年代に英国出身の版画家スタンリー・ウィリアム・ヘイター(1901~88年)と出会ったことを契機に収集を開始。元化学者でもあるヘイターは、複数の色を一つの銅板に定着させる「一版多色刷り」技法を考案したことで知られる。
ヘイターはフランス・パリの工房でピカソやミロらと新しい版画制作に励んだ後、戦禍を逃れて1940年に米国ニューヨークへ移住。米国での代表作「五人の人物」(1946年)は、複数の色彩を取り入れた初の大作で、倒れた人や嘆く聖母のような人物が線と色彩の交錯によりダイナミックに表現されている。
ニューヨークの工房ではダリ、ロスコ、ポロックら著名な画家たちがヘイターのもとで版画に取り組んだ。大分県立美術館の木藤野絵・主任学芸員は「ヘイターは、米国発で盛んになったポロックら抽象表現主義の作家たちにも、版画を通して少なからず影響を与えた」と解説する。
1950年にパリに戻った後は、一版多色刷り技法を発展させ、より複雑な色と線の表現を可能にし、水をモチーフにした創作を続けた。会場では、晩年まで本人が部屋に飾った作品など、ヘイターの版画と絵画約20点を見ることができる。
草間彌生の軌跡を追う80点
展覧会のもう一つの柱は、草間彌生さん(1929年生まれ)の作品だ。初期から近作までの80点で作家の軌跡を追うことができる。
「点」(1951年)や、1957年の渡米後に網の目で海面を描いた「THE SEA」(1958年)など、その後の反復的な表現につながる最初期の貴重な作品が並ぶ。かぼちゃのモチーフや、布による多数の突起物で構成される彫刻「ソフト・スカルプチュア」といった代表的な作品群も目を引く。
一方、パステルやインクによる自画像や、「生きていた頃の私の魂の思い出」(1975年)など帰国直後の内面世界を幻想的なコラージュや絵画で表現した作品は、静穏さが印象に残る。
その他の見どころと開催概要
このほか奈良美智さんらの作品を含む計約130点が展示されている。会期は8月16日まで。前衛芸術の多様な表現を堪能できる貴重な機会となっている。



