歌舞伎人気再燃、新規来場客3倍に『国宝』効果で若手スター躍進
歌舞伎人気再燃、新規来場客3倍に『国宝』効果

映画『国宝』の大ヒットを契機に、歌舞伎への関心が高まっている。松竹の発表によれば、2025年7月から2026年5月までの約1年間に、約7万人の新規観客が劇場を訪れた。『国宝』公開前の月間新規来場客数は約2000人だったが、現在は約6000人と、単純計算で約3倍に増加した。

古典から現代アニメまで幅広い演目

歌舞伎の魅力は、その演目の多彩さにある。江戸時代から続く「春興鏡獅子」や「藤娘」といった古典の名作から、宮崎駿監督のアニメを原作とした「もののけ姫」、さらには「風の谷のナウシカ」「ファイナルファンタジーX」「ルパン三世」など、人気漫画やゲームを題材にした新作まで、幅広い作品が上演されている。

2026年7月3日に新橋演舞場で開幕した市川團子さん(22歳)主演の「もののけ姫」は、連日満員が続いている。團子さんの祖父である市川猿翁さんが確立した「スーパー歌舞伎」の最新作で、物語性と奇抜な演出(ケレン)が特徴だ。團子さんは「歌舞伎はデフォルメの演劇で、『もののけ姫』のような壮大な世界観の作品に向いている」と語る。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

さらに、中村獅童さん(53歳)ら生身の俳優とバーチャルシンガー・初音ミクの映像が共演する「超歌舞伎」も、デジタル世代の支持を集めている。

若手スター候補の台頭

歌舞伎界では、20~30歳代の将来のスター候補が揃っている。今年、読売演劇大賞の杉村春子賞(新人賞)を受賞した尾上右近さん(34歳)は、ドラマや映画でも活躍し、知名度を高めている。2026年9月・10月に開催する自身の公演では、『国宝』に登場した「鷺娘」を踊る予定だ。右近さんは「はやりに乗るのも歌舞伎の文化」と語る。

市川染五郎さん(21歳)も涼やかな美男子ぶりで高い人気を集め、祖父・松本白鸚さん(83歳)や父・松本幸四郎さん(53歳)が演じてきた大役を継承し、主演の機会が増えている。

歌舞伎座で7月に上演されている「元禄忠臣蔵 御浜御殿綱豊卿」は、人間国宝の片岡仁左衛門さん(82歳)と尾上松也さん(41歳)のダブルキャスト。松也さんは当代の最高峰と交互に大役に挑む絶好の機会を得ている。

芸の継承と名跡

歌舞伎の一門は「家」単位で構成され、芸は父から子、師匠から弟子へと継承される。昨年、名門「音羽屋」の当主名を襲名した八代目尾上菊五郎さん(48歳)は、少年時代から六代目尾上丑之助、五代目尾上菊之助と順に名跡を継いできた。襲名披露公演は2026年7月の全国巡業で締めくくられる。菊五郎さんは「古典を継承し、その時代に合わせた表現方法を探りながら、今の時代に息づく歌舞伎を届けていきたい」と語る。

観客マナーと文化芸術の楽しみ方

歌舞伎の臨場感を高めるのが、見せ場で客席からかかる掛け声「大向こう」だ。俳優の屋号「成田屋!」や名跡の代数「八代目!」、居住地「紀尾井町!」など様々な掛け声がある。本来、大向こうは誰がかけてもよいとされるが、演技や鑑賞の邪魔にならない絶妙なタイミングが必要で、専門の人が劇場後方からかけている。今年のある舞台では、不適切な屋号を連呼した観客に対し、SNSで非難の声が上がった。

同様のマナー問題は他の芸術鑑賞でも見られる。バレエでは連続回転の見せ場での手拍子がダンサーのリズムを狂わせる問題があり、クラシック音楽やオペラでは「拍手は指揮者がタクトを下ろしてから」とアナウンスされる。過剰な「ブラボー!」は演奏の余韻を損なう恐れもある。

不文律のマナーは難しい面もあるが、文化芸術をみんなで楽しむための心得として大切にしたい。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ