2026年4月、KADOKAWAから初のエッセイ『「フツーに生きる」がなんでできないのかやっと気づいたから聞いて』を上梓した綾瀬ちいさん。小学生時代から学業優秀で、就活では大手企業から続々内定を得るなど順風満帆な日々を送っていたが、なぜ「フツーに生きる」ことができなかったのかを自己分析として綴った一冊だ。同月にはAbemaPrimeにも生出演し、自身の体験を語った。
両極端の人生:国語全国1位と算数偏差値31
綾瀬ちいさんの人生は、終始、両極端の数字とラベルを同時に背負って進んできた。国語の全国1位と算数の偏差値31、神戸女学院と内定者懇親会での蕁麻疹、阪大塾入試3位とドクターストップ、五大商社内定とニート。社会が用意する学歴や内定、年収といった物差しでは彼女は順当な勝者だったが、その物差しが採点しない部分で苦しんだ。
社会の評価軸の外側で居場所を見つける
飲み会で空気を読む能力、結婚相手を会社の人と笑顔で言える能力、総合職の男性社員を自然に立てる能力――そうした数字にならない側の試験を、彼女はすべて落とした。しかし、いまYouTubeのカメラの前で「私はこういう試験を落としてきました」と言葉にすることで、12万人を超える視聴者と本一冊分の読者を獲得している。社会の評価軸の上で勝てなかった神童が、その評価軸の外側に立って、自分の落とし方を売り物にしているのだ。
教室の中から外へ:神童の新たな居場所
教室の中では神童扱いされた子どもが、教室の外に出た瞬間に居場所を失い、最終的に教室そのものを描写する側に回ってしまう――これはこの連載に出てくる多くの「神童だったあの子」と同じである。彼女のチャンネルのコメント欄には、似たようなアンバランスを抱えた視聴者たちが、毎週、自分の話を書き込んでいる。
令和の時代に用意された新たな仕事
神童の行き先は、研究者でも、商社マンでも、教師でもない場合がある。自分が落ちた試験を、ひとつずつ言葉にしていく仕事が、令和の側にはちゃんと用意されていた。綾瀬ちいさんの現在地は、そのことのひとつの証明である。



