夏の暑さで長い本を読みにくいと感じたら、短いエッセーを読むのがお勧めだ。エッセイストの古賀及子さん(47)が『暮らしの信じ方』(ダイヤモンド社)、イラストレーターの三好愛さん(39)が『犬のうんちとわかりあう』(ミシマ社)を刊行した。生活感があり、物の見方を軽やかに変えてくれる。
『暮らしの信じ方』:日常に潜む本質を見つける
古賀及子さんは、「普通にご飯を食べて仕事をしていても、暮らしに目を凝らして観察していると、何かしらの発見がある。エッセーの面白さとは、日常に埋もれていたものの本質を見つけるということなんですよね」と語る。
『好きな食べ物がみつからない』『5秒日記』など、読者と等身大の雰囲気を漂わせた日記やエッセーが注目されている書き手だ。
「ぞくっとして興奮する、都心の狭いこの家が私の家だ」「大好きだし尊敬もしているパンを、けれど消極的に毎朝食べる」といった文章のタイトルに、心をくすぐられる。住宅は都心と郊外のどちらが好みか、狭い家の魅力、朝はパンとご飯のどちらがいいかなど、身近な話題がつづられる。
三好愛さん:心が「ざわっ」とした瞬間を見過ごさない
三好愛さんは、育児と仕事の合間に一人で訪ねた焼き肉店で店員に話しかけられ、ちぐはぐな会話をした経験や、年の瀬のスーパー銭湯でおばあさんが転んだことなど、身の回りのことを題材にした30編余りの文章を収録する。
「心が『ざわっ』としたとき、『ざわ』だけで終わらせたくない。心に引っ掛かったのは、自分の人生に少し痕跡を残したということ。ただ通り過ぎるのは、もったいないと思います」と語る。
三好さんは、多くの本の装画や挿絵などを手掛けるイラストレーターで、目の描き方が特徴的な不思議な雰囲気の絵で知られる。文章と絵の違いについては、「モチーフは感情のもやもやみたいなところ。描き手としては、絵の具か文字か画材の違いのような感じ」だという。一方で、「受け手に届くときは、言葉の方が『生感』が強い感じがするので気をつけています」と話す。
子ども時代の経験と現在の仕事
今著には「小学生の頃、自分以外の人間やものと距離感がはかれず、途方にくれることがありました」という一文がある。子どものころ、人に優しくすることや他人を傷つけないことを考えすぎ、自分がよく分からなくなることがあったという。
「超真面目に」受験勉強して入った私立の中高一貫校は、「そんなに勉強しなくても頭がいい子がいることを知り、生き抜くのが大変だった」と振り返る。絵が好きなことから先生に勧められて大学で美術を学び、現在の仕事につながった。
本の題名は、娘が生まれて子育てを始めたとき、話ができない子どもの体調を知る方法が「うんち」だったことが深く心に残ったことからつけたという。「子どもが生まれたことで、自分の内面と向き合う感じからもう一歩進んで、世の中の外に開いてみたいとも思うようになりました」と語る。



