厳しい暑さが続く中、夏の疲れがたまる残暑の時期に、落ちた食欲を酸味や辛みで刺激する料理や、冷涼感を楽しめる調味料が注目されている。
残暑バテは「免疫バテ」、食欲回復が重要
「実は残暑バテとは、免疫バテ。暑さや寝苦しさで体に疲れがたまると、食欲が落ちて栄養が不足し、免疫力が低下し、体調を崩しやすくなるのです」と話すのは、東洋医学の考え方を取り入れる内科医で、イシハラクリニック(東京)の石原新菜副院長だ。
石原さんによると、暑い屋外と冷房が効いた屋内を何度も行き来すると、寒暖差によって自律神経が乱れ、免疫機能が低下し、残暑バテを招くという。食欲の回復は、対策でもっとも大事なポイントの一つだ。
「酸辛香」メニューの検索数が急増
辛い料理は食欲を刺激するといわれている。飲食店情報サイトを運営する「ぐるなび」が令和7年8月のインターネット検索データを分析したところ、「辛み」を代表するスープ料理「麻辣湯(マーラータン)」とスパイスを使ったインドの炊き込みご飯「ビリヤニ」の検索数がともに、前年同月比で2.5倍に伸びていた。
また今年4月に全国の飲食店約300店に「今夏トレンドになる食」を尋ねると、「酸味、辛み、香りで食欲を呼ぶもの」が26.3%でトップとなった。
酸味は唾液や胃液の分泌を促し、食欲を引き出す。辛みはその刺激が発汗を促し、体にこもる熱を逃して体温を下げる手助けをする。香りは嗅覚を通じて脳を刺激し、食欲回復を後押しする。
若手料理人が考案、夏季限定コラボメニュー
ぐるなびは、東京都内の若手料理人たちと「酸辛香」を取り入れた夏季限定メニューを考案した。「ON the TABLE CHINESE」(渋谷区)のオーナーシェフ、平賀大輔さん(46)は「トマト引き立つ黒酢酢豚」。肉団子の代わりに酸味と甘みのあるミニトマトを豚肉で巻いて揚げ、酸味の利いた黒酢に絡めてさっぱりと仕上げた。「中国料理は脂っぽい」というイメージを覆す爽やかさだ。
「IGOR COSY(イゴールコージー)渋谷本店」の中村勇斗シェフ(29)は、締めの一品に注文する客が多い看板メニューの土鍋ご飯を「夏でも食べやすいように」と、八丈島レモンとホタテを使って食欲をそそる新たな味に。レモンの清々(すがすが)しい香りと、ホタテの濃厚な磯の香り、「おこげ」の香ばしさが重なり、鼻腔が刺激される。
ぐるなびが運営するサイト「楽天ぐるなび」の特集ページには、これらのコラボメニュー以外に、「酸辛香グルメ」を提供する店舗として全国の約50軒が掲載されている。
凍らせるつゆが人気、家庭の定番も裏付け
一方、夏の家庭の定番メニューは、そうめんやひやむぎだ。マーケティング会社が集めた一般家庭の献立データ(令和4~6年分)を、味の素が気候変化と絡めて分析したところ、気温上昇とともに食卓に上る頻度が増えるメニューのトップは「ひやむぎ、そうめん」と裏付けられた。
今年は食品大手各社が、凍らせて使うそうめんつゆを相次いで市場に投入した。中でも、味の素の「氷みぞれつゆ」は、発売から約5カ月で43万個を売り上げた。いずれも食べ方は同じ。パウチ入りのつゆを容器ごと凍らせ、少しほぐしてからかけると、氷点下の冷たさとシャリシャリした触感を楽しむことができる。
食欲を落とさないように工夫して、長びく夏を乗り切ろう。



