愛知県西尾市の葵製茶をかき氷用に特別にブレンドしたオリジナル抹茶に練乳をたっぷりとかけた一杯。23年にわたり湘南で愛されるかき氷店「埜庵」は、多い時で7時間待ちの行列ができる一方、冬には客がゼロになる日もあるなど、季節商売の厳しさに直面してきた。
鎌倉から鵠沼へ、客層の変化
店主の石附さんは、「鎌倉と鵠沼は、全然土地の性格が違います」と語る。人が多く一見さんがほとんどだった鎌倉に対し、鵠沼はローカルな雰囲気で、近隣住民が主な客層だ。大手チェーン店がなく、個人商店が並ぶ商店街には湘南の文化が根付いている。移転後、客層は「通りがかり」から「埜庵のかき氷を食べる」目的で来る人へと変わった。
冬の客数ゼロ、そして転機
しかし、冬になると客が来ない日が続き、真冬の雨の日には客数ゼロを記録したこともあった。石附さんは「冬にかき氷を食べてくれる人をつくること」を目指し、氷の削り方やシロップを季節に合わせて調整した。さらに、一人ひとりの客と一対一の関係を築くことに注力。天然氷の話や自らの想いを伝え、温かいコーヒーをサービスするなど、もてなしの質を向上させた。
「一度来た客が帰ってこない」という認識
石附さんは、客が来ないのは正確には「一度来た客が帰ってこない」ことだと考える。来るか分からない人への宣伝よりも、一度来てくれた人に誠意を持って対応することが大切だという。「そうすれば、きっとその人は帰ってくる」。その結果、寒い季節に訪れる人ほどコアなファンになっていった。
素材へのこだわり
鵠沼海岸の店舗では、日光の「三ツ星氷室」の天然氷を使用。自家製シロップや素材へのこだわりが、リピーターを生む原動力となっている。



