ネパール出身の大学生アンギタさんから、カボチャのツルを使った「タルカリ」の作り方を教わった。日本ではあまり手に入らない食材に、アンギタさんは「日本にはあまりないのでうれしいです」と喜んだ。
手書きのレシピ集がきっかけ
アンギタさんとは、地元のイベントで出会った。専門学校のブースで、当時そこの学生だった彼女の卒業制作の冊子「わたしたちが紹介する母国の料理 手書きのレシピ集」が目に留まった。パソコンもAIも使わず、手書きの字に手描きのイラストがかわいらしい本がきっかけで仲良くなった。
6月、昔ながらの商店街の先にあるアンギタさんの家を訪ねた。台所の横には家庭用の祭壇(プジャ・コーター)があり、「ネパール人が大切にするお祭りに『ダサイン』があります。ヒンズー教の女神をまつります。引っ越す前は家が狭くて祭壇が作れなかったので、今は作れて嬉しい」と語った。
スパイス香るアチャールとチキンカレー
祭壇に見守られて教わったのは、ダサインのときによく食べるアチャール。生の紫タマネギとキュウリ、ゆでたグリーンピースやジャガイモなどの野菜に、ゴマやスパイス、青唐辛子を熱した油をかける料理だ。唐辛子を油で炒めると喉や目が痛くなり、せき込んだが、アンギタさんも同じようにせき込んでいた。
次はククラコマス・タルカリ(チキンカレー)。こだわりは、骨付きの新鮮な鶏肉を使うことと、最初にそれを炒めること。落ち着いた雰囲気のアンギタさんだが、このこだわりを語る時は女の子らしいほがらかな笑顔を見せた。鶏肉から脂がしみ出したら、すりたてのニンニクとショウガ、クミン、みじん切りの紫タマネギを加えて炒め、トマトやガラムマサラを入れて煮込む。
カボチャのツルのタルカリとダール
タルカリはネパール語で「おかず」という意味。夏の間に出てくる新芽のツルややわらかい葉を使い、2人で筋を取り除いていく。フライパンに熱した油でスパイスとジャガイモを炒め、刻んだツルや葉を加えて混ぜながら炒め、蓋をして蒸らす。
さらにダール(豆のスープ)も作る。「ネパール人は、ダールがないとご飯を食べた気がしない。日本人のみそ汁みたいな感じです」。圧力鍋から蒸気が出る様子を見て、「実家ではこれを『口笛』と呼んでいました」と笑った。
料理の合間に、家族の話も聞かせてくれた。中東のドバイに働きに出ているお母さんとは毎日のようにビデオ通話するが、8年も会っていないこと。お父さんと妹がネパールにいること。日系企業で働いていたおばあちゃんに薦められて日本に行こうと思ったことなどだ。
出来上がったカボチャのツルのタルカリは、野菜が多く油が少ないせいか、いくらでも食べられそうだった。床に座って手食でいただくと、追加で唐辛子のアチャールも出してくれた。「すっごく辛いよ~」とあどけなく笑うアンギタさん。
「ネパールではバスマティライス(長粒米)を食べていたんだけど、日本に来てからは手に入らなくて、日本のお米を食べていました。そうしたら、日本のお米のほうが好きになった」
アンギタさんは、商店街の昔ながらのお肉屋さんで買った鶏肉でカレーを作り、日本語で大学の講義を受け、居酒屋でアルバイトをし、カボチャのツルのタルカリでネパールの夏を感じる。大学に、仕事に、忙しい時間の中で、生活の幸せを見つける人だった。



