神戸市東灘区の御影公会堂は、港町・神戸らしい客船をイメージした歴史的建造物だ。昭和8年の開館から90年余り、戦争や震災などの試練を乗り越え、現在も集会場やホール、ステージを備えた地域住民の交流の場として使われている。
白鶴酒造の寄付で建設、客船を思わせる外観
御影公会堂は、灘五郷の一つ御影郷を代表する蔵元、白鶴酒造の七代目嘉納治兵衛の寄付で建てられた。丸窓やバルコニーを備えた外観は、大海原を進む客船を連想させる。
地下には、大阪のホテルで料理を学んだ鈴木貞が公会堂と同時に開業した老舗洋食店「御影公会堂食堂」がある。現在は孫で3代目の眞紀子さん(63)が店を切り盛りする。
創業時からの味、ハヤシライスが人気
店内には開業当時のメニューが展示され、英語と日本語の併記でコールハムサラダやハイシライス(ハヤシライス)、オムレツ、ビーフステーク、ポークチャップなどハイカラな料理名が並ぶ。現在も提供されるハヤシライスは、牛骨や鶏ガラ、香味野菜を長時間煮込んだデミグラスソースが特徴だ。
戦時中、神戸大空襲で周辺一帯が焼け野原となる中、御影公会堂も内部がほぼ全焼したが、外壁は残った。作家・野坂昭如の小説「火垂るの墓」には、焼け野原で兄と妹が呆然と眺める建物として描かれている。食堂には野坂が訪れた際の写真も飾られている。
震災を乗り越え、100周年へ
戦後、改修工事で再建された公会堂では、昭和32年から58年まで結婚式場が開設され、食堂から料理が提供された。平成7年の阪神大震災では倒壊を免れ、避難所として地域住民を支えた。食堂も一時休業したが、同年4月に再開した。
老朽化に伴い、公会堂は平成28年から1年間の耐震改修に入り、食堂も休業した。眞紀子さんは「改修前の廃業も考えたが、お客さんの『やめないで続けて』の声に励まされてやってきました」と話す。厨房で仕込みをしながら「ここはパワースポットだなと思う。100周年までは頑張っていこうと思っています」と語った。



